弦楽器:ストラディバリウス Stradivarius

ストラディバリウスは、イタリアのストラディバリ父子3人(父アントニオ、子フランチェスコ、オモボノ)が製作した弦楽器のこと。


特にアントニオ・ストラディバリが17世紀~18世紀にかけて製作した弦楽器が有名である。なお、通常「ストラディバリウス」といった場合は楽器を、「ストラディバリ」といった場合は楽器製作者を指す。 ストラディバリの製作した弦楽器には、18世紀の法令に基づきラテン語にてAntonius Stradivarius Cremonensis(アントニウス・ストラディウァリウス・クレモネンシス)というラベル(クレモナのアントニオ・ストラディバリ作、の意)が貼られている。ここから、彼(ら)の手による弦楽器は「ストラディバリウス」あるいは省略して「ストラド」と呼ばれる。

楽器

現存するストラディバリウスは、ヴァイオリンが圧倒的に多く、ついでチェロ、ヴィオラの順である。マンドリン、ギター、ハープは極めて少数が残されているのみである。

ヴァイオリン

約520挺現存 ストラディバリの時代のヴァイオリンはバロック・ヴァイオリンと呼ばれるものであり、主に室内楽に用いられた。市民革命後、王侯貴族の音楽である室内楽から、劇場における演奏会へと演奏形態が変化した。19世紀になって楽器製作の中心はパリに移り、より大きな華やかな音が出るヴァイオリンが求められた。フランスの楽器製作者ジャン・バティスタ・ヴィヨームやニコラ・リュポーらはバイオリンの、ネックの傾斜や指板の長さ・傾きとコマの高さ等を変更した新しいスタイルを確立した。既存のガット弦やバロック弓の使用を前提としていた楽器についても、改造が施された。ストラディバリウスもオリジナルから、バスパーやネックなどが改造されて使用されている。

ヴィオラ

8挺現存(うち5挺はこの数十年市場に出回っていない)ヴァイオリンと比べると極めて少数が製作されたのみであり、その稀少性からヴァイオリンの約2倍、チェロの約1.5倍といった、極めて高額の価格がつけられる。音色についてはヴァイオリンほど高くは評価されていないが、そもそも稀少である上、良い状態で演奏可能なものが数挺しかないため、評価困難である。

チェロ

63挺現存 ストラディバリが活躍した時代はチェロが現代のものと同じ大きさになる過渡期で、ストラディバリも当初胴長80cm前後の大型のチェロ(現代のチェロは胴長75cm前後)を製作していた。(これらの楽器の大部分は、その後小さく改造されている。) その後1699年には胴長75cmの型が作られ、1700年以降に製作されたものはほとんどこの型によるものである。やや縦長のこのタイプは「ストラド型」と呼ばれ、現代のチェロはこのタイプが最も多い。音色はヴァイオリンと同様高い評価がされており、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチが所有していた「デュポー」、カルル・ダヴィドフ、ジャクリーヌ・デュ・プレが使用し、現在はヨーヨー・マが使用している「ダヴィドフ」が有名である。

マンドリン

2本現存 1680年製のものが国立音楽博物館に、1706年製のものが個人所有で残されている The other, dated ca. 1706, is owned by private collector Charles Beare of London. Known as Mandolino Coristo, it has eight strings.。

ギター

5本と少数の断片が残されている。演奏可能なものは1679年製の「サビオナリ」1本のみである。

ハープ

アルペッタ(arpetta、小型のハープ)1台が残されているのみである。ナポリ音楽院に保存されている。

アントニオ・ストラディバリ作の2本の弓の1本、「王チャールズ4世の弓」は1700年にクレモナで製作されたもので、現在、国立音楽博物館に「NMM 4882」として所蔵され、同館のローリンズ・ギャラリーで展示されている。なお、もう1本はロンドンで私蔵されている。

日本国内では、特定の老舗弦楽器商で仕入れられることがある。また、資産家や所有団体、関係団体から演奏家へ期間限定あるいは終身契約で貸与される場合がある。日本では、公益法人や企業の保有しているストラディバリウスが音楽家に貸与されている。特に日本音楽財団は複数のストラディバリウスを保有し、国内外の演奏家に無償貸与している。

改造と補修

200年前と現在では、弦楽器に求められる諸条件が異なるため、現役楽器として使用されているストラディバリウスは広範囲な「改造」を受けており、オリジナルの状態ではない。最も大きな要因は金属弦の登場である。制作された17-18世紀はガット弦が使用されたが、現在は金属弦が主流となっており、元々ガット弦用に設計されたストラディバリウスを、その後の弦楽器工が改造しているのである。ヴァイオリンなどの弦楽器は膠で接着され、容易にバラバラに解体することができる。金属弦の張力に対応するために、バスバーは強度の強いものに交換され、駒のデザインも変更するなどが主な内容となっている。変形を来たしたネックも適時交換されるが、どんなに状態が悪くても表板と裏板は、補修ののちに再利用される。

技術的知見

ベルリンの楽器博物館に展示されているストラディバリウス。1703年のもの。 ストラディバリウスの音色の秘密については、長い間科学的調査の対象とされていた。過去に様々な調査結果があり、それぞれ賛否両論である。現代人にどのヴァイオリンを使ったか知らせずに演奏を聴かせると、ストラディバリウスより現代製ヴァイオリンを好むという回答が多かったとの研究結果もある。ストラディバリウスの音色を再現したという現代の弦楽器製作者は自称・他称、複数存在するが評価は定まっていない。

ストラド・モデル

ストラディバリのヴァイオリンやチェロの寸法などをコピーして後世の弦楽器製作者が模倣した楽器は「ストラド・モデル」と呼ばれる。ストラド・モデルは、ヘッドスクロールやF字孔の形状などが主たる模倣の対象で、グァルネリ・デル・ジェスの模倣と並び、ヴァイオリン属のデザインの古典となっている。これらストラド・モデルは、名前がつけられている特定の楽器の(傷や左右非対称といった)忠実な外的模倣から、現存するストラディバリウスの最大公約数に基づいたコピーまで多様である。現代の寸法標準は、ストラドのロングモデルから形式的に取られており、世界中の職人がそれに則っている。

ストラディバリウスと演奏家

ストラディバリウスにはその所有者や演奏者の来歴が明らかなものがあり、たどってきた軌跡に由来する二つ名(通称)が付けられている。たとえば、イツァーク・パールマンのヴァイオリンは「ソイル」、ジャクリーヌ・デュ・プレやヨーヨー・マが使用したチェロは「ダヴィドフ」の名で知られる。

そのほかにストラディバリウスを愛用した演奏家として有名な人物には、ジャック・ティボー、ミッシャ・エルマン、ジノ・フランチェスカッティ、ナタン・ミルシテイン、アルテュール・グリュミオー、ダヴィッド・オイストラフなどが挙げられる。

Wikipedia

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