チャイコフスキー:交響曲 第6番 ロ短調 作品74「悲愴」 "Pathetique"

指揮: 尾高 忠明 Tadaaki Otaka
札幌交響楽団 Sapporo Symphony Orchestra
2011.6.4

交響曲第6番はチャイコフスキー最後の大作であり、その終楽章を始め彼が切り開いた独自の境地が示され、19世紀後半の代表的交響曲のひとつとして高く評価される。
チャイコフスキー自身は最終楽章にゆっくりとした楽章を置くなどの独創性を自ら讃え、初演後は周りの人々に「この曲は、私の全ての作品の中で最高の出来栄えだ」と語るほどの自信作だった。
 
第1楽章 Adagio - Allegro non troppo 序奏付きソナタ形式、ロ短調
本人が語ったようなレクイエム的な暗さで序奏部が始まる。やがてここから第一主題が弦(ヴィオラとチェロの合奏だが、両パートの奏者の半分のみでどこか弱弱しい)によって現れる。この部分は彼のリズムに関する天才性がうかがえる。第1主題が発展した後、続く第2主題は、五音音階による民族的なものであるが、甘美で切ない印象を与える。小結尾主題とも第2主題第2句とも言えるような、やはり淋しい主題を挟んで再び第2主題が戻り、静かに提示部が終わる。
全合奏でいきなり始まる展開部はアレグロ・ヴィーヴォで強烈で劇的な展開を示す。そのまま、再現部となり、第1主題がトゥッティで厳しく再現されるが、提示部のような発展のかわりに、苦悩を強めた絶望的な経過部がきて、第1主題に基づいた全曲のクライマックスとも言うべき部分となり、トロンボーンにより強烈な嘆きが示される。やがてロ長調で第2主題が現れるが再現は第1句のみで、そのまま儚いコーダが現れるがもはや気分を壊さず、全てを諦観したような雰囲気の中で曲は結ばれる。
  第2楽章 Allegro con grazia 複合三部形式、ニ長調
4分の5拍子という混合拍子によるワルツ。スラブの音楽によく見られる珍しい拍子で、優雅でありながらも不安定な暗さと慰めの様なメロディーが交差する。中間部はロ短調に転調し、一層暗さに支配され終楽章のフィナーレと同様の主題が現れる。
 
第3楽章 Allegro molto vivace スケルツォと行進曲(A-B-A-B)、ト長調
12/8拍子のスケルツォ的な楽想の中から4/4拍子の行進曲が次第に力強く現れ、最後は力強く高揚して終わる。弟のモデストは、彼の音楽の発展史を描いていると語っている。
 
第4楽章 Finale. Adagio lamentoso - Andante - Andante non tanto
ソナタ形式的な構成を持つ複合三部形式、ロ短調
冒頭の主題は第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが主旋律を1音ごとに交互に弾くという独創的なオーケストレーションが行われている。なお再現部では第1ヴァイオリンにのみ任され、提示部のためらいがちな性格を排除しているのも興味深い。音楽は次第に高潮し、情熱的なクライマックスを形作り、再現部の後は次第に諦観的となりやがて曲は消える様に終わる。
 
チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」
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