チャイコフスキー:バレエ組曲「くるみ割り人形」作品71a

Arranged for two pianos by Nicolas Economou.
ピアノ 1:マルタ・アルゲリッチ Martha Argerich
ピアノ 2: リーリャ・ジルベルシュテイン Lilya Zilberstein

 

バレエ組曲「くるみ割り人形」作品71aは、チャイコフスキーがバレエ音楽から編んだ組曲である。「くるみ割り人形」作曲中のチャイコフスキーはこの頃、自作を指揮する演奏会を企画していたが、あいにく手元に新作がなく、また作曲する暇もなかったため、急遽作曲中の「くるみ割り人形」から8曲を抜き出して演奏会用組曲とした。バレエの初演に先立ち、1892年3月19日初演された。組曲版の演奏時間は約23分。作曲家自身のセレクトということもあり、「白鳥の湖」「眠れる森の美女」の組曲と異なって、この構成は大抵の演奏において不変である。以下は慣例名による。

第1曲 小序曲 (Ouverture miniature)Allegro giusto、変ロ長調、4分の2拍子(複合2部形式。展開部を欠くソナタ形式とも取れる)。
この小序曲のみ編成から低弦、つまりチェロとコントラバスが除かれ、Tacetを指示されている。このバレエ全体のかわいらしい曲想を感じさせる。おとぎ話のような主題がヴァイオリンにより提示される。これらはクラリネット、フルートなどに引き継がれ、次第に大編成化する。すると一転してオーボエによる叫びがあり、メロディックで優雅な第2主題(ヘ長調)が提示される。この後、第1主題・第2主題(変ロ長調で再現)はそのまま反復される。性格舞曲 (Danses caracteristiques)
第2曲 行進曲 (Marche)Tempo di marcia viva、ト長調、4分の4拍子(ロンド形式)。A-B-A-C-A-B-Aの形を取る。
第3曲 金平糖の精の踊り (Danse de la Fee Dragee)Andante non troppo、ホ短調、4分の2拍子(複合三部形式)。
タイトルの原題は「ドラジェの精の踊り」だが、日本ではドラジェは一般的でなかったためにこの邦題が定着して現在に至っている。同様に英語圏ではクリスマスのキャンディーである「シュガープラムの精の踊り(Dance of the Sugar Plum Fairy)」となっている。当時、発明されたばかりであったチェレスタを起用した最初の作品として広く知られる。当初、このパートは天使の声と喩えられた珍しい楽器アルモニカ(または別種の「ガラス製木琴」)のために書かれており、後に旅行先でチェレスタと出会ってから楽器指定を変えたことが明らかになっている。なお、チャイコフスキーは初演まで、チェレスタを使用することを公言しなかった。チャイコフスキーはパリから楽器を取り寄せる際、モスクワの業者に送った手紙の中に「他の作曲家、特にリムスキー・コルサコフとグラズノフに知られないように」と言う趣旨のことを書いており、先に使われるのを防ぐ目的があったようである。
第4曲 ロシアの踊り(トレパック) (Danse russe)Tempo di Trepak, Molto vivace、ト長調、4分の2拍子(複合三部形式)。
第5曲 アラビアの踊り (Danse arabe)Allegretto、ト短調、8分の3拍子(変奏曲形式)。
この曲のベースになった曲はグルジア民謡の子守唄である。
第6曲 中国の踊り (Danse chinoise)Allegro Moderato、変ロ長調、4分の4拍子(小三部形式)。
第7曲 葦笛の踊り (Danse des mirlitons)Moderato Assai、ニ長調、4分の2拍子(小ロンド形式)。A-B-A-C-Aの形を取る。
おもちゃの笛「ミルリトン」が踊る。
第8曲 花のワルツ (Valse des fleurs)Tempo di Valse、ニ長調、4分の3拍子(複合三部形式)。
クラシック音楽の全体の中でも非常にポピュラーな曲であり、単独で演奏されることも多い。序奏にはハープが効果的に用いられる。ハープのカデンツァののちに、ホルンにより主題が提示される。続くワルツは弦による有名な旋律である。さらにウィーン風の旋律がフルートに、情熱的な旋律がヴィオラ・チェロに提示される。前者2つは結尾部でまとめられ、大交響楽的なクライマックスを迎える。

チャイコフスキー バレエ作品『くるみ割り人形』

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