チャイコフスキー:弦楽セレナーデ Serenade for Strings ハ長調 作品48

指揮:小澤 征爾 Seiji Ozawa
サイトウ・キネン・オーケストラ Saito Kinen Orchestra
Saito Kinen Festival Matsumoto - 1992.9.5

弦楽セレナードは、ピョートル・チャイコフスキーが1880年に作曲した弦楽オーケストラのための作品。チャイコフスキーの代表作の一つとして広く親しまれている。この作品は、チャイコフスキーがモスクワ音楽院に着任した時からの親友でチェロ奏者のコンスタンチン・カールロヴィチ・アルブレヒト(英語版)(1836年 - 1893年)に捧げられた。

当時のヨーロッパ音楽について表面的な効果を狙ったものという批判的な感想を持っていたチャイコフスキーが、自身の敬愛するモーツァルトの精神に立ち返る、という意図から書いたものであり、パトロンのフォン・メック夫人へ完成を報告する手紙にも「強い内的衝動によって書かれたもので、だからこそ真の芸術的な価値を失わないものです」と記している。

初演は1881年10月18日(新暦10月30日)にサンクトペテルブルクで、エドゥアルド・ナープラヴニークが指揮するロシア音楽協会のオーケストラで行われた。ナープラヴニークは初演について「好評で、満場一致の要求でワルツをアンコールした」と述べている。

ハ長調という最も単純明快な調性で書かれ、第2楽章がその属調であるト長調、第3楽章がそのさらに属調であるニ長調、第4楽章の序奏が再びト長調、主部でハ長調に戻るという、五度関係を用いたゆるやかなアーチ状の構成を成している。各楽章にはそれぞれの特徴を端的に表した章題がつけられている。

第1楽章 Pezzo in Forma di sonatina; Andante non troppo - Allegro Moderato
「ソナチネ形式の小品」と題されている通り、展開部を欠くソナタ形式である。チャイコフスキー本人は「モーツァルトへのオマージュで、彼の様式の模倣を意図しています」と書いているが、ハ長調でありながらイ短調の主和音で開始される重厚な序奏は、作曲者本人の色が出たきわめてメランコリックな印象深いものである。序奏の雰囲気を保ち、広々とした第一主題と、細かい音符による、軽やかな第二主題からなる。提示部が終わると、リピートするように見せかけて、再現部を始めるというユニークな書法をとっている。コーダで序奏主題が再現される。
第2楽章 Waltz; Moderato (Tempo di valse) ロンド形式(A-B-A-C-A-B-A)のワルツ。
ソナタや交響曲の楽章にワルツを用いることは、チャイコフスキーの常套手段であったが、この楽章も例外でない。ワルツのリズムに乗って、第1ヴァイオリンが奏するメロディーは親しみやすく、有名である。
第3楽章 Elegie; Larghetto elegiaco
「エレジー」と題されているが全曲にわたって長調である。三部形式だが中間部はメイン主題の自由な変奏でかなり長く、また序奏も再現するという独特の形式である。
ホモフォニックで印象的な序奏に始まり、3連符のリズムに乗って、様々な声部で淡々とした歌が奏される。倍音を響かせた終止の和音から、直接第4楽章に繋がれる。
第4楽章 Finale (Tema russo); Andante - Allegro con spirito
自由な変奏曲とロンド形式を組み合わせたような楽章。「ロシアの主題によるフィナーレ」とあるように、序奏もメイン主題もロシア民謡を基盤としている。
第3楽章から続いた和音によって開始され、そこから穏やかであるが、感動的で何かが起こりそうな序奏となる。主部のモティーフが示され、主部に流れ込む。終結部に第1楽章の序奏主題が再現され、堂々と全曲を閉じる。

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