マーラー: 交響曲 第1番 「巨人」 "Titan" 第1楽章

指揮: 山田 一雄 Kazuo Yamada
読売日本交響楽団 Yomiuri Nihon Symphony Orchestra

交響曲第1番ニ長調(Symphonie Nr. 1 D-dur) は、グスタフ・マーラーが作曲した最初の交響曲。
マーラーの交響曲のなかでは、演奏時間が比較的短いこと、声楽を伴わないこと、曲想が若々しく親しみやすいことなどから、演奏機会や録音がもっとも多い。

1884年から1888年にかけて作曲され、マーラー自身は当初からその書簡などに記しているように交響曲として構想、作曲していたが、初演時には「交響詩」として発表され、交響曲として演奏されるようになったのは1896年の改訂による。「巨人」という副題が知られるが、これは1893年「交響詩」の上演に際して付けられたものの、後にマーラー自身により削除されている。この標題は、マーラーの愛読書であったジャン・パウルの小説『巨人』(Titan)に由来する。この曲の作曲中に歌曲集『さすらう若者の歌』(1885年完成)が生み出されており、同歌曲集の第2曲と第4曲の旋律が交響曲の主題に直接用いられているなど、両者は精神的にも音楽的にも密接な関係がある。演奏時間約55分(繰り返しを含む)。

「巨人」の標題について
「巨人」という標題は、ジャン・パウルの長編小説からとられている。ジャン・パウルはドイツのロマン派の作家で、ロベルト・シューマンなどドイツ・ロマン派の作曲家にも影響を与えた。1800年から1803年にかけて書かれた『巨人』は、主人公アルバーノが恋愛や多くの人生経験を重ねて、成長していく過程が描かれ、そこには当時ヴァイマール宮廷で活躍したゲーテに代表される文学者や天才主義に対する批判が込められている。

マーラーは「巨人」のほか、「ジーベンケース」などジャン・パウルの他の著作も愛読していた。ただし、マーラーがこの曲に「巨人」の標題を当初与えたのは、小説と音楽に関連があるためではない。マーラーは1896年3月20日、ベルリンでの4楽章版初演直後の友人宛手紙で「巨人の標題や曲への説明は、聴衆の理解を容易にするため友人たちに勧められて後付けしたに過ぎない。今ではこれらが適切ではないことがわかり、的外れな性格付けどころか、聴衆が誤解を受けてしまっていたことを実際に体験したため、「巨人」の標題を破棄したと書き記している。

第1楽章 Langsam, Schleppend, wie ein Naturlaut - Im Anfang sehr gemachlich
ゆるやかに、重々しく ニ長調 4/4拍子 序奏付きの自由なソナタ形式(提示部反復指定あり)
弦のフラジオレットによるA音の持続のうえに、オーボエとファゴットが4度下降する動機を示す。これは全曲の統一動機であり、カッコウの鳴き声を模したとする解釈もあるが、いずれにせよ、自然を象徴するものと考えられている。遠くからファンファーレや、ホルンの牧歌的な響きが挿入される。低弦に半音階的に順次上行する動機が現れ、4度動機が繰り返されるうちに主部に入り、チェロが第1主題を出す。

第1主題は4度動機で始まり、『さすらう若者の歌』の第2曲「朝の野原を歩けば」に基づく。第2主題はイ長調で木管に出るが第1主題の対位旋律のように扱われるため、あまり明確でない。提示部は反復指定がある。展開部に入ると序奏の雰囲気が戻る。音楽は次第に沈み込むようになるが、やがて、ホルンの斉奏によって明るく解き放たれる。その後、第1主題と第2主題が展開される。やがて半音階的に上昇する動機が不安を高めるように繰り返されフィナーレを予告、トランペットのファンファーレが鳴りクライマックスをむかえる。その後再現部となるが、非常に短い上、各主題も省略された形で急速に再現されるため、まるでコーダのように感じられる。ティンパニの4度動機の連打で終わる。
演奏時間は15~18分程度。

交響曲第1番 (マーラー)

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