マーラー:連作歌曲「亡き子をしのぶ歌」Kindertotenlieder 第3曲 "Wenn dein Mütterlein"

指揮: レナード・バーンスタイン Leonard Bernstein
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 Wiener Philharmoniker
バリトン独唱: トーマス・ハンプソン Thomas Hampson     1988

『亡き子をしのぶ歌』は、グスタフ・マーラーが作曲した声楽とオーケストラのための連作歌曲である。『子供の死の歌』とも訳される。歌詞はフリードリヒ・リュッケルトの同名の詩による。原詩はリュッケルトの作った425篇から成る詩集であり、彼の子供のうち2人が16日のうちに相次いで死ぬという悲しい出来事のあった後、1833年から1834年までの間に書かれた。マーラーは425篇から5篇を選び、1901年から1904年にかけて作曲した。

歌はマーラーの後期ロマン派的な作風によって書かれており、曲が表現する雰囲気と印象は、それらのタイトルによってよく示されている。終曲は長調で終わり超越した雰囲気がある。曲集の痛ましさは、彼がこの曲集を書いた4年後に、マーラーがまさに娘マリアを猩紅熱によって4歳で失ったという事実によって増大させられる。彼はグイド・アドラーに書いた手紙の中でこう語っている。「私は自身を、私の子供が死んだと想定して書いたのだ。もし私が本当に私の娘を失ったあとであったなら、私はこれらの歌を書けたはずがない」。

第3曲 「きみのお母さんが戸口から入ってくるとき」

Wenn dein Mütterlein
Tritt zur Tur herein
Und den Kopf ich drehe,
Ihr entgegensehe,
Fallt auf ihr Gesicht
Erst der Blick mir nicht,
Sondern auf die Stelle,
Naher nach der Schwelle,
Dort wo wurde dein
Lieb Gesichtchen sein,
Wenn du freudenhelle
Tratest mit herein
Wie sonst, mein Tochterlein.
 
Wenn dein Mütterlein
Tritt zur Tur herein
Mit der Kerze Schimmer,
Ist es mir, als immer
Kamst du mit herein,
Huschtest hinterdrein
Als wie sonst ins Zimmer!
 
O du, o du, des Vaters Zelle,
Ach, zu schnelle
Erloschner Freudenschein!
あなたのお母さんが
戸口に歩み寄り、部屋に入ろうとして、
私が頭をめぐらせ
振り返り見るとき、
最初の私の一瞥の視線は
お母さんの顔ではなく
むしろ敷居のそばの、
その場所の
あなたの愛らしい顔が見えていた場所へ
もし、あなたが晴れやかな喜びに満ちあふれ
お母さんと一緒に入って来るならば、
いつもどおり何も変わらない
私の娘であるのに
 
あなたのお母さんが
戸口から中へ歩み入り
蝋燭のうす明かりと一緒に
それがいつものようだと感じさせるには
もし、お母さんの後ろから
あなたがすばやく追いかけて来るならば
それはいつもと何も変わらない部屋の中であるのに
 
おお、あなた、おお。おとうさんの分身、その細胞よ。
ああ、本当にたちまちに
あまりにも早く輝かしい喜びの光を消し給うたのだ!

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