ホルスト:組曲「惑星」(Ⅰ 火星, Ⅱ 金星, Ⅲ 水星, Ⅳ 木星, Ⅴ 土星, Ⅵ 天王星, Ⅶ 海王星 )作品32

指揮: ユージン・オーマンディ Eugene Ormandy
フィラデルフィア管弦楽団 The Philadelphia Orchestra

作曲当時太陽系の惑星として知られていた8つの天体のうち、地球を除いた7つの天体(すなわち水星、金星、火星、木星、土星、天王星、海王星)に、曲を1曲ずつ割り当てた、全7曲で構成される組曲である。全曲を通した演奏時間は約50分である。各曲の平均は7分弱、最短の「水星」は約4分、最長の「土星」は約10分である。

「火星」と「水星」の位置が入れ替わっていることを例外として、各惑星は軌道長半径上で太陽から近い順番に配列されている。「火星」と「水星」の位置が入れ替わっているのは、最初の4曲を交響曲の「急、緩、舞、急」のような配列にするためだと言われる。もう1つの説明として、黄道12宮の守護惑星に基づくという説がある。黄道12宮を白羊宮(おひつじ座)から始まる伝統的な順番に並べるとその守護惑星は、重複と月・太陽を無視すれば楽章の順序に一致する。その為、冥王星は水星と木星の間に来るべきだとする意見もある。また各楽章(惑星)の順序は、地球から距離の近い順番に配列されているという説もある。

Ⅰ 火星、戦争をもたらす者 Mars, the Bringer of War Allegro
日本では「木星」に次いでよく知られている曲である。第一次世界大戦の頃の作品のため、その時代の空気が反映されていると指摘されることがある。不明確な調性、変則的な拍子など、ストラヴィンスキーの『春の祭典』からの影響が大きいといわれる。再現部の第2主題と第3主題の順序が入れ代わっているが、ソナタ形式に相当する。
「ダダダ・ダン・ダン・ダダ・ダン」という5拍子のリズムを執拗に繰り返す。このリズムは木製のマレットでティンパニ、弦楽器のコル・レーニョとハープで演奏される。
提示部第3主題でのテナーチューバ(ユーフォニアムで演奏されることが多い)のソロが、オーケストラにおけるこの楽器の秀逸な用例としてしばしば言及される。全185小節。
Ⅱ 金星、平和をもたらす者 Venus, the Bringer of Peace
Adagio - Andante - Animato - Largo - Animato - Largo - Animato - Largo - Adagio - morendo - Tempo I
緩徐楽章に相当する。主に三部形式。主調は変ホ長調だが、途中一部の楽器が嬰ヘ長調になる部分がある。中間部にはヴァイオリンやチェロのソロもある。全141小節。
Ⅲ 水星、翼のある使者 Mercury, the Winged Messenger Vivace
スケルツォに相当する曲である。ホ長調と変ロ長調の複調が用いられている。主に二部形式。ホルスト自身がフルスコアを書いたのはこの曲のみで、この曲を「心の象徴」と述べている。複調故に楽器の交代が多く、オーケストラの腕の見せ所である。全296小節。
Ⅳ 木星、快楽をもたらす者 Jupiter, the Bringer of Jollity
Allegro giocoso - Andante maestoso - Tempo I - Maestoso - Lento maestoso - Presto
組曲中、最もよく知られている。特に中間部Andante maestosoの旋律が非常に有名である。この曲もスケルツォに近い性格を持ち合わせている。大きな三部形式であり、主調はハ長調、中間部は変ホ長調、終盤で中間部の旋律が戻ってくるときにはロ長調である。全409小節。
Ⅴ 土星、老いをもたらす者 Saturn, the Bringer of Old Age
Adagio - Poco animato - Tempo I - Animato - a tempo - Animato - L'istesso tempo - Andante
組曲中で最も長い。調性は淡いハ長調で、ハ音上の付加六の和音や七度の和音が多用される。ホルスト自身この曲が最も気に入っていたといわれ、組曲中でも中核をなす曲と考えられる。全155小節。
Ⅵ 天王星、魔術師 Uranus, the Magician Allegro - Lento - Allegro - Largo
スケルツォに近い曲。デュカスの『魔法使いの弟子』に影響を受けたといわれる。また、冒頭の印象的な4音(G, Es, A, H)は、ホルストの名前(Gustav Holst)を表していると言われ、曲中にも木管・金管・ティンパニなどを使って様々な形で執拗なまでに取り入れられている。全250小節。
Ⅶ 海王星、神秘主義者 Neptune, the Mystic Andante - Allegretto
ホ短調と嬰ト短調の複調。静かなこの曲では56小節目から女声合唱も演奏に加わり、消え入るように終わる。楽譜には、最後の1小節に反復記号が記され、【この小節は音が静寂の中に消え入るまでリピートせよ】と書いてある。全101小節。

惑星 (組曲) Wikipedia

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