ブルックナー: 交響曲 第7番 ホ長調

指揮: セルジュ・チェリビダッケ Sergiu Celibidache
ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団 Münchner Philharmoniker
Live Tokyo 18 Oct 1990

 

アントン・ブルックナーの交響曲第7番ホ長調は、彼の交響曲中、初めて、初演が成功した交響曲として知られている。1884年のこの初演以来、好評を博しており、第4番と並んで彼の交響曲中、最も人気が高い曲の一つである。第4番のような異稿は存在しないが、第2楽章の打楽器のようにハース版とノヴァーク版では差異が生じている箇所がある。

第1楽章 アレグロ・モデラート ホ長調、2/2拍子(2分の2拍子)。
ソナタ形式で、三つの主題を持つ。全体的に美しく明るい曲である。ティンパニの使用が極力抑えられていて、登場するのは再現部の最後とコーダのみである。この第1楽章の第1主題の発生に関しては、ブルックナー自身が「夢の中で友人が『ブルックナーさんこの主題を使って幸運を掴んでください』と明示され、慌てて起き上がって、主題を書き留めた」と言う逸話が伝わっている。
ブルックナー特有の“原始霧”で曲が開始される。弦楽器群の弱音のトレモロの上に、チェロが第1主題を奏し、続いてオーケストラの高音楽器に引き継がれていく。この第1主題は2オクターブにまたがる広い音域を持ち、曲の冒頭から伸びやかな雰囲気が広がっていく。
第2主題はオーボエとクラリネットの木管楽器群から始まって、徐々に他の楽器に引き継がれ、第1主題よりはかなり長い。
全合奏の後に第3主題が始まる。最初はロ短調から始まり、めまぐるしい転調を繰り返す。
そうして展開部に入るが、ここは比較的短く、三つの主題がそれぞれ展開されていく。第185小節(スコア練習記号I)からチェロで演奏される旋律も印象的で、このモチーフが次の交響曲第8番で第4楽章の第2主題に取り入れられることになる。
間もなく第1主題がハ短調で、下降音型の形を取って全合奏により戻ってくる。やがて元のホ長調に戻り、通常の再現部に入る。
比較的短く切り詰められた再現部の後、コーダはホ音の上に組み立てられ、第1主題に基づいて締めくくられる。

第2楽章 アダージョ 嬰ハ短調、4/4拍子(4分の4拍子)。“Sehr feierlich und sehr langsam”(非常に荘厳に、そして非常にゆっくりと)。 A - B1 - A - B2 - A のロンド形式。
主要主題は嬰ハ短調で、Bは1回目が嬰ヘ長調で登場する。(モデラート、第37小節から) 主要主題の1回目の再現は、再び“Tempo I. Sehr langsam”(元の速さで、非常にゆっくりと)の指示に戻り、第77小節から始まるが、今度は早いペースで転調を繰り返しながら進行する。 Bの2回目は変イ長調で、第133小節から始まり、再びモデラートのテンポになる。ここはすぐに終わり、主要主題の2回目の再現が、第157小節から始まる。 6連音符の上に乗せられた主題は、ついに第177小節で破裂のクライマックスを迎える(ハース版以外の版では、ここで打楽器も加わる)。そして第184小節(スコア練習記号X)から、ワーグナーのための「葬送音楽」が開始され、4本のワグナーチューバが厳粛な音楽を奏でる。最後は主要主題が、異名同音で同主調の変ニ長調で奏され、消えるように静かに締めくくられる。

第3楽章 スケルツォ イ短調、3/4拍子(4分の3拍子)。“Sehr Schnell”(非常に速く)の速度標語がある。A - B - A の三部形式。
前の第2楽章の哀切な緊張感から解放され、ブルックナーのスケルツォらしい野性的な雰囲気にあふれている。
中間部(B)はヘ長調で、のどかな曲想である。

第4楽章 フィナーレ ホ長調、2/2拍子(2分の2拍子)。
“Bewegt, doch nicht schnell”(運動的に、あまり速くなく)。自由なソナタ形式、三つの主題を持つ。
第1主題(ホ長調)は、第1楽章第1主題と同じモチーフを使用しながら、符点リズムで軽やかな雰囲気に変えている。
めまぐるしい転調を経て、すぐに第2主題へ移行する。第3主題はコラール風の旋律で、さらにめまぐるしい転調のもとに進められる。
展開部は第1主題をもとに組み立てられるが、短い。
すぐに第3主題が回帰し、再現部となる。第2主題の再現の後、第1主題が戻ってくる。
その後、テンポを大きく落としてコーダに入る。曲の最後に、第1楽章の第1主題が戻ってくる。
従来のブルックナー交響曲の最終楽章に比べると、この第7番の第4楽章は軽快な親しみやすさにあふれている。反面、第4番・第5番・第8番などに比べると「終楽章が短い」と、否定的に評されることもある。また、再現部では主題再現が逆に行われ、全体が分かりにくいという評価もある。

交響曲第9番 (ブルックナー)

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