ブルックナー:交響曲 第5番 変ロ長調 第2楽章 Adagio, Sehr langsam

指揮: アジム・カリモフ Azim Karimov
モスクワ音楽院交響楽団 Concert Symphony Orchestra of the Moscow State Conservatory
The Great Hall of Moscow State Conservatory 19 december, 2016

アントン・ブルックナーの交響曲第5番 変ロ長調は1875年から1878年にかけて作曲された。 本作は1894年4月8日グラーツにおいてフランツ・シャルクの指揮で初演された(この際には、後述のシャルク改訂版が用いられた)。

金管楽器によるコラールの頻出やフーガをはじめとした厳格な対位法的手法が目立つ。作曲者自身はこの交響曲を「対位法的」交響曲あるいは「幻想風」交響曲と呼んでいた(ほかに、国ごとに「信仰告白」「ゴチック風」「悲劇的」「ピッツィカート交響曲」「カトリック風」「教会風」などの愛称もある)。構築性とフィナーレの力強さにおいて、交響曲第8番と並び立つ傑作という評価もある。

研究者によると、この曲は一旦1876年に完成され、その後その自筆稿上に直接改訂を加えたとのことである。1876年の完成形の再現が不可能であること、1876年の段階で初演等が行われていないことから、一般には「この曲は作曲者による改訂が行われていない」とみなされている。「原典版」であるハース版(1935年)、ノヴァーク版(1951年)はどちらも、1878年の最終形態を元にしている。資料上の問題点が少ないこともあり、この二つの版の間には、誤植の修正程度の違いしかない。1876年段階の譜面は、一部校訂報告の中で紹介されている。また編成上のチューバは、1877年以降の改訂時に初めて付け加えられた(ブルックナーがチューバを交響曲に用いたのは、これが初めてであり、第4番の第2稿改訂にも先立つ)。ちなみにこれはブラームスの交響曲第2番(1877)とほぼ同編成(チューバを含む2管編成、トランペットの編成のみ異なる)である。
初演
2台ピアノでの演奏は、下記に先立ち、1887年4月に行われている。
管弦楽での初演は、1894年4月8日グラーツにおいてフランツ・シャルクの指揮で行われた(シャルク版)。
原典版の初演は、1935年10月20日ミュンヘン ジークムント・フォン・ハウゼッガー指揮でハース版により行われた。
日本初演は、1962年4月18日大阪フェスティバルホールでオイゲン・ヨッフム指揮のアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団により行われた。
演奏時間 約78分(カット無しの原典版で各21分、18分、14分、25分の割合)。
 
第2楽章 Adagio. Sehr langsam(アダージョ、非常にゆっくりと。)
ニ短調、2分の2拍子。A-B-A-B-A-Codaのロンド形式をとりやはりピチカートで始まる。ただし、各部は再現のたびに展開される。主部は弦5部の三連音のピチカートに乗ってオーボエが物寂しい主要主題を奏でる。この主題は全曲を統一するものである。副主題は弦楽合奏による深い趣をたたえたコラール風の美しい旋律で、「非常に力強く、はっきりと」提示される。ひとしきり頂点を築くと、ティンパニだけが残り、主部が回帰する。弦の6連符の動きの上に、管楽器が主要主題を展開し、、強弱の急激な交換が行われる。副主題も発展的な性格を持って再現され、第1副部とは違った形で頂点が築かれる。主部が再び回帰し、木管とホルンにより主要主題が奏でられる。ヴァイオリンの6連符の動きの上にトランペットやトロンボーンも加わって高潮してゆく。後半には3本のトロンボーンによるコラール楽句が現れる。この部分は第7交響曲第2楽章や第4交響曲の終楽章の最終稿を彷彿させる。コーダは、主要主題をホルン、オーボエ、フルートが順に奏してあっさりと終わるため、ブルックナーの緩徐楽章としては小粒な印象を与えることもある。演奏時間は指揮者によって差が出やすい楽章である。「第5」作曲にあたって最初に書かれた楽章で、冒頭のオーボエ主題は、全楽章の主要主題の基底素材となって出現する。
 

交響曲第5番 (ブルックナー)

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