ブルックナー:交響曲 第5番 変ロ長調 WAB.105

指揮: ニコラウス・アーノンクール Nikolaus Harnoncourt
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 Royal Concertgebouw Orchestra (旧称アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団)

 
アントン・ブルックナーの交響曲第5番 変ロ長調は1875年から1878年にかけて作曲された。
本作は1894年4月8日グラーツにおいてフランツ・シャルクの指揮で初演された(この際には、後述のシャルク改訂版が用いられた)。
金管楽器によるコラールの頻出やフーガをはじめとした厳格な対位法的手法が目立つ。作曲者自身はこの交響曲を「対位法的」交響曲あるいは「幻想風」交響曲と呼んでいた(ほかに、国ごとに「信仰告白」「ゴチック風」「悲劇的」「ピッツィカート交響曲」「カトリック風」「教会風」などの愛称もある)。構築性とフィナーレの力強さにおいて、交響曲第8番と並び立つ傑作という評価もある。
研究者によると、この曲は一旦1876年に完成され、その後その自筆稿上に直接改訂を加えたとのことである。1876年の完成形の再現が不可能であること、1876年の段階で初演等が行われていないことから、一般には「この曲は作曲者による改訂が行われていない」とみなされている。「原典版」であるハース版(1935年)、ノヴァーク版(1951年)はどちらも、1878年の最終形態を元にしている。資料上の問題点が少ないこともあり、この二つの版の間には、誤植の修正程度の違いしかない。1876年段階の譜面は、一部校訂報告の中で紹介されている。また編成上のチューバは、1877年以降の改訂時に初めて付け加えられた(ブルックナーがチューバを交響曲に用いたのは、これが初めてであり、第4番の第2稿改訂にも先立つ)。ちなみにこれはブラームスの交響曲第2番(1877)とほぼ同編成(チューバを含む2管編成、トランペットの編成のみ異なる)である。
初演[編集] 2台ピアノでの演奏は、下記に先立ち、1887年4月に行われている。
管弦楽での初演は、1894年4月8日グラーツにおいてフランツ・シャルクの指揮で行われた(シャルク版)。
原典版の初演は、1935年10月20日ミュンヘン ジークムント・フォン・ハウゼッガー指揮でハース版により行われた。
日本初演は、1962年4月18日大阪フェスティバルホールでオイゲン・ヨッフム指揮のアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団により行われた。
演奏時間 約78分(カット無しの原典版で各21分、18分、14分、25分の割合)。
 
第1楽章 Introduktion: Adagio - Allegro(序奏部:アダージョ - アレグロ)
変ロ長調、2分の2拍子、序奏付きソナタ形式。序奏はこの曲全体の原旋律である低弦のピッツィカートで始まる。ヴィオラ、ヴァイオリンが弱音で入ってくると、突如として金管のコラールが吹き上がる。律動的になって高揚し、収まったところで主部にはいる。高弦のトレモロの中をヴィオラとチェロが特徴的なリズムの第1主題を出す。この主題は全管弦楽に受け取られ、魅惑的な転調を見せる。ヘ短調で始まる第2主題は弦によるやや沈んだ表情のもので弦5部のピッツィカートにより厳かに始まり、第1ヴァイオリンが呼応する。続く第3主題は管楽器の伸びやか旋律を中心に進んでゆき、次第に曲想が盛り上がり変ロ長調の頂点に達するが、急速に静まる。ホルンの遠くから鳴らされるような響きを残しながら、ごく静かに弦のトレモロとともに提示部を閉じる。展開部はホルンとフルートの対話に始まり、まもなく導入部が回帰する。第1主題が入ってきて発展し、第2主題の要素も弱い音で重なる。金管のコラールが鳴り響き、再現部を導入する。再現部は主題が順番どおり再現されるが、全体的に圧縮されている。コーダに入ると、導入部の低弦のモティーフが繰り返されて第1主題で高揚し、輝かしく楽章を閉じる。
第2楽章 Adagio. Sehr langsam(アダージョ、非常にゆっくりと。)
ニ短調、2分の2拍子。A-B-A-B-A-Codaのロンド形式をとりやはりピチカートで始まる。ただし、各部は再現のたびに展開される。主部は弦5部の三連音のピチカートに乗ってオーボエが物寂しい主要主題を奏でる。この主題は全曲を統一するものである。副主題は弦楽合奏による深い趣をたたえたコラール風の美しい旋律で、「非常に力強く、はっきりと」提示される。ひとしきり頂点を築くと、ティンパニだけが残り、主部が回帰する。弦の6連符の動きの上に、管楽器が主要主題を展開し、、強弱の急激な交換が行われる。副主題も発展的な性格を持って再現され、第1副部とは違った形で頂点が築かれる。主部が再び回帰し、木管とホルンにより主要主題が奏でられる。ヴァイオリンの6連符の動きの上にトランペットやトロンボーンも加わって高潮してゆく。後半には3本のトロンボーンによるコラール楽句が現れる。この部分は第7交響曲第2楽章や第4交響曲の終楽章の最終稿を彷彿させる。コーダは、主要主題をホルン、オーボエ、フルートが順に奏してあっさりと終わるため、ブルックナーの緩徐楽章としては小粒な印象を与えることもある。演奏時間は指揮者によって差が出やすい楽章である。「第5」作曲にあたって最初に書かれた楽章で、冒頭のオーボエ主題は、全楽章の主要主題の基底素材となって出現する。
 
第3楽章 Scherzo. Molt vivace, Schnell - Trio. Im gleichen Tempo(スケルツォ:モルト・ヴィヴァーチェ、急速に、トリオ:(主部と)同じテンポで。)
ニ短調、4分の3拍子。複合三部形式。スケルツォ主部だけでソナタ形式をとり、アダージョ楽章冒頭のピチカート音形を伴奏にせわしなく駆り立てるような第1主題と、ヘ長調で「Bedeutend langsamer(テンポをかなり落として)」レントラー風の第2主題が提示される。次第に高揚し小結尾となり、展開部へ続く。展開部では前半が第1主題、後半は第2主題を扱う。さらに14小節のコーダが続く。中間部は変ロ長調 2/4拍子、3部形式。ホルンの嬰ヘ音に導かれて木管が愛らしい旋律を奏でる。主部の再現は型どおりである。
 
第4楽章 Finale. Adagio - Allegro moderato(終曲。アダージョ - アレグロ・モデラート)
変ロ長調、2分の2拍子。序奏付きのソナタ形式にフーガが組み込まれている。序奏は、第1楽章の序奏の再現で始まる。クラリネットがフィナーレ主題の動機を奏し、第1楽章第1主題、第2楽章第1主題が回想される。この手法は、ベートーヴェンの第9交響曲のフィナーレに通じるもの。その後チェロとコントラバスが第1主題を決然と出して主部が始まり、フーガ的に進行する。全休止の後第2ヴァイオリンがスケルツォ楽章のレントラー素材に基づく第2主題を軽快に出す。休止の後、第3主題が力強く奏される。第3主題は第1主題の冒頭の音型に基づくもので、第4楽章最初の頂点とも言うべきクライマックスを築く。再び全休止の後、金管が荘重なコラールを奏する。展開部では、コラール主題に基づくフーガ、これに第1主題が加わって二重フーガとなる。ブルックナーは「カットしてもよい」と練習番号にダル・セーニョ記号を付した。長いプロセスを経て再現部が始まる。第1主題の再現にもコラール主題が合わさっており、提示部に比べて短いものとなっている。第2主題は比較的型どおりで、第3主題の再現は大規模なものとなっている。ここでは第1楽章の第1主題が組み合わさり、あたかもコーダであるかのようなクライマックスを築き上げてく。コーダではフィナーレの第1主題の動機にはじまり、第1楽章第1主題が繰り返し奏されて発展するうちに、頂点に達して第1主題が力強く奏されるとコラール主題が全管弦楽で強奏され、圧倒的なクライマックスを形作る。最後に第1楽章第1主題で全曲を閉じる。大規模で長大な楽章である。

交響曲第5番 (ブルックナー)

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