ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77

指揮: パーヴォ・ヤルヴィ Paavo Jarvi
hr交響楽団 hr-Sinfonieorchester
ヴァイオリン: ヒラリー・ハーン Hilary Hahn
Alte Oper Frankfurt, 21. Marz 2014

ブラームスのヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77(Violinkonzert D-Dur op.77)は、1878年に作曲されたヴァイオリンと管弦楽のための協奏曲。
ブラームスは幼時からピアノよりも先にヴァイオリンとチェロを学び、その奏法をよく理解してはいたが、最初の、そして唯一のヴァイオリン協奏曲を書き上げたのは45歳になってからだった。これは、交響曲第2番の翌年という、彼の創作活動が頂点に達した時期にあたり、交響的な重厚な響き、入念な主題操作、独奏楽器を突出させないバランス感覚、いずれもブラームスの個性が存分に表現された名作となった。本作品は、ベートーヴェンの作品61、メンデルスゾーンの作品64と並んで『3大ヴァイオリン協奏曲』と称されている。
 
第1楽章 Allegro non troppo ニ長調、ソナタ形式。
冒頭からゆったりとした第1主題がヴィオラ、チェロ、ファゴットにより演奏される。オーケストラによる第2主題の提示がないまま弦楽器群がマズルカ風のリズムを力強く奏すとコデッタとなり流れるように下降して、そのまま第2提示部へ入る。独奏ヴァイオリンが情熱的な音で演奏に加わり第1主題をオーケストラと歌い交わす。オーケストラによる提示部で披露された動機が回想されるうちに独奏ヴァイオリンが優美な第2主題を奏でる。再びコデッタ現れ、総休止で提示部が終わる。 展開部はオーケストラのトゥッティによる第1主題で始まり、これまでに登場した動機を次々に活用し、入念に変形・組み合わせしてブラームスの美質を存分に味わえる。また独奏ヴァイオリンには9度、10度という幅広い音程での重音奏法が要求されている。これについてヨアヒムが「よほど大きな手でないと難しい」と修正を提案したのを拒絶している。再現部もやはりトゥッティで始まり、提示部の主題を順番に再現し、カデンツァとなる。 ブラームスはカデンツァを書いていないため、この協奏曲は多くのヴァイオリニストがそれぞれのカデンツァを書いており、その種類が多いことでも知られている。主なものに、初演者のヨアヒム、フリッツ・クライスラー、レオポルド・アウアー、アドルフ・ブッシュ、ヤッシャ・ハイフェッツらのものがあるが、今日よく演奏されるのはヨアヒムとクライスラーのものであろう。カデンツァの後は第1主題に基づくコーダが続く。
第2楽章 Adagio ヘ長調、三部形式。
管楽器による合奏で始まり、オーボエが美しい主題を奏でる。サラサーテがこの作品の出版譜をブラームスから贈られながら、それでも演奏しない理由として「オーボエが旋律を奏でて聴衆を魅了しているというのに、自分がヴァイオリンを持ってぼんやりそれを眺めていることに我慢がならない」と語ったと言われる魅惑的な旋律である。独奏ヴァイオリンがこの旋律を引き継ぎ装飾的に奏でた後、経過句に入り中間部へ移る。中間部はヴァイオリンが憧れを切々と訴える「ヴァイオリンによるコロラトゥーラのアリア」と評される部分である。
主部に戻ると再びオーボエが旋律を歌うが、時折中間部の動機が聞こえ、平穏のうちに終わる。
 
第3楽章 Allegro giocoso,ma non troppo vivace - Poco piu presto ニ長調、変則的なロンド・ソナタ形式。
ロンド主題はジプシー風の力強い主題で、独奏、トゥッティと何度か繰り返される。第1副主題は独奏ヴァイオリンが8度音程の重音で奏でる上行音型。続くロンド主題の後の第2副主題は2拍子と3拍子を組み合わせリズムに変化を持たせた主題。この主題を操作して行くうちやがて第1副主題が再現される。再び冒頭主題が戻ると続いて対位法的なカデンツァとなる。これにオーケストラが順次加わって行き結尾へと移る。ポコ・ピウ・プレストのコーダはトルコ行進曲風のリズムをチェロが刻み、独奏ヴァイオリンが主題を変形した旋律を演奏するが、やがて管楽器が第1副主題を暗示する。最後は低弦がピツィカートを奏する上で独奏ヴァイオリンが主要主題による和音を静かに奏で、八分休符をはさんで力強く終わる。

ブラームス:ヴァイオリン協奏曲

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