ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 イ短調 作品102

指揮: マリス・ヤンソンス Mariss Jansons
バイエルン放送交響楽団 Bavarian Radio Symphony Orchestra
ヴァイオリン: アンネ=ゾフィ・ムター Anne-Sophie Mutter
チェロ:マキシミリアン・ホルヌング Maximilian Hornung

ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 イ短調(ドイツ語: Das Doppelkonzert a-Moll fur Violine, Violoncello und Orchester) 作品102は、ヨハネス・ブラームスが1887年に作曲した、ヴァイオリンとチェロを独奏楽器とする二重協奏曲である。優れた独奏者でなければ演奏効果の上がらない難曲である。ブラームスの作曲した最後の管弦楽作品であり、その後ブラームスはピアノ曲や歌曲、室内楽曲の作曲に専念することになる。

作曲の動機
1886年に友人のチェリストであるロベルト・ハウスマン(ドイツ語版)とともにチェロソナタ第2番を初演したブラームスは、ハウスマンからのリクエストもありチェロを独奏楽器とする協奏的作品を書くというアイデアを温めていた。しかしこれはチェロ協奏曲という形では実現せず、ヴァイオリンとチェロのための協奏曲という着想を得た。ブラームスは1887年7月24日にヨーゼフ・ヨアヒムに宛てた手紙に次のようにしたためている。 ところでちょっとした衝撃だ。というのは最近、繰り返しやめようとどんなに試みても、ヴァイオリンとチェロのための協奏曲の楽想を我慢できないのです。
当時ブラームスは数十年来の友人であるヴァイオリニストのヨーゼフ・ヨアヒムと不仲となっていた。その原因は、ヨアヒムの妻アマーリエの不倫を疑い離婚したのちにアマーリエに送った慰めの手紙が、ヨアヒムの離婚訴訟にアマーリエ側の証拠品として提出されたことだった。本作の作曲過程においてブラームスはヨアヒムに助言を求め、それを契機として二人は和解することになる。そのため、二重協奏曲の作曲が当初から和解を意図したものであったと言われていたものの、その証拠はなく結果論に過ぎないとも考えられる。 なおマックス・カルベックの伝記の記述をもとに、ブラームスはもともと交響曲第5番の構想を練っておりそれを転用したものが本作であるとも言われていたが、この説は現在では疑問視されている。
曲の構成 全3楽章から構成される。演奏時間:約35分(各楽章、18分、8分、9分)

第1楽章 アレグロ (Allegro) イ短調、4分の4拍子、協奏風ソナタ形式。
管弦楽による力強い第1主題の短い断片で開始する。すぐチェロがカデンツァ風に登場し、ヴァイオリンも同様に演奏に加わった後、全合奏による主題提示部が開始し正式に2つの主題が提示される。その後は型通り独奏提示部が始まり、ソリが再び演奏を始める。展開部は少し長めで2つの部分にわけられる。再現部を経て結尾では曲は基調に変わり、第1主題で開始し、これを第2展開風に少し扱ってから、強くイ短調で曲を終える。

第2楽章 アンダンテ (Andante) ニ長調、4分の3拍子、複合3部形式。
伸びやかなホルンで開始し、管楽器がこだまのように受ける。弦楽の伴奏に乗って、独奏ヴァイオリンとチェロが主題を奏する。中間部では木管だけの原色的な純粋な色彩で始まる。再示部では交響曲第3番の第3楽章のように、中間部の主題も少し扱う。

第3楽章 ヴィヴァーチェ・ノン・トロッポ (Vivace non troppo) イ短調、4分の2拍子、ソナタ形式。
独奏チェロにより軽快に主題が提示される[16]。ヴァイオリンがこれを繰り返した後、曲は若干テンポを落として短い経過的な部分を過ぎ、再度テンポを戻してクレッシェンドし、フォルティッシモに達すると管弦楽が勇壮に、先の主題を反復する[17]。副次主題は独奏群に主にゆだねられる。展開部は短く、すぐに再現部が来る。結尾はイ長調で力強く終える。

逸話
ブラームスは後に「一風変わった、気まぐれなもの」と語っている。
クララ・シューマンは「この協奏曲はある意味で和解の曲です。ヨアヒムとブラームスは長い疎遠のあとで、またお互いに話をするようになった」と日記に書いている。
カザルス・トリオのメンバーであるジャック・ティボーとパブロ・カザルスがソロを務め、アルフレッド・コルトーが指揮をしたものが最古の録音である。
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮で、ソリストにイェフディ・メニューインとカザルスを配した録音の計画が進んでいたが、実現しなかった。

ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 (ブラームス)

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