ヨハネス・ブラームスの交響曲第3番ヘ長調作品90(原題(ドイツ語):Sinfonie Nr. 3 in F-Dur op. 90)は、1883年5月から10月にかけて作曲された。ブラームスの交響曲の中では演奏時間が最も短く、新鮮かつ明快な曲想で知られる。初演者ハンス・リヒターは、「この曲は、ブラームスの『英雄』だ。」といったという。しかし、当のブラームスはこの曲の標題的な要素についてはなにも語っていない。両端楽章で英雄的な闘争をイメージさせる部分もあるが、その根底を流れているのは、ロマン的な叙情や憂愁と考えられる。
第4楽章 Allegro - Un poco sostenuto ヘ短調-ヘ長調。2/2拍子。自由なソナタ形式。
ファゴットと弦が第1主題を示す。弱いが暗雲が立ちこめるような雰囲気を持つ。トロンボーンの同音反復に導かれて、第2楽章のコラール風動機が奏されるが、嵐の前の静けさを思わせる不吉なものとなっている。直後に、音楽は激しくなり情熱的にすすむ。
第2主題はハ長調、チェロとホルンによる三連符を用いた快活なものでイ短調、ト長調、変ロ長調と転調を繰り返す。小結尾はハ短調で再び闘争となる。展開部は第1主題を専ら扱うもので第1主題の再現を兼ねている。ゆえにここから再現部と見なすこともある。まず第1主題が木管で現れる。しばらく第1主題が細分化して扱われるが、これが展開的に発展して大きな頂点を作り上げる。この頂点で再現部に入る。コラール風の動機が打ち破るように強奏で繰り返され、同時に第1主題も弦で自由に再現される。ハ短調から半音ずつずり上がってヘ長調に達して第2主題の再現に入る。一転ヘ短調となるという、異様な効果を上げている。コデッタはほぼ型どおりの再現となっている。Un poco sostenutoのコーダに入ると、第1主題が表情を変えながら繰り返され、やがてヘ長調に転じる。モットーが現れ、弦の細かな反復する動きに乗って、コラール風の動機が示されるが、今度は空に架かる虹のように儚い。最後には第1楽章第1主題が回想され、静かに曲を閉じる。