ブラームス:交響曲 第3番 ヘ長調 作品90

指揮: ヘルベルト・フォン・カラヤン Herbert von Karajan
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 Berliner Philharmoniker
1973 ベルリンフィルハーモニーホール Berliner Philharmonie

ヨハネス・ブラームスの交響曲第3番ヘ長調作品90(ドイツ語: Sinfonie Nr. 3 in F-Dur op. 90)は、1883年5月から10月にかけて作曲された。ブラームスの交響曲の中では演奏時間が最も短い。初演者ハンス・リヒターは、「この曲は、ブラームスの『英雄』だ。」と表現した。しかし、当のブラームスはこの曲の標題的な要素についてはなにも語っていない。

第1楽章 Allegro con brio ヘ長調。6/4拍子。ソナタ形式(提示部反復指定あり)。
冒頭、管楽器のモットーにつづいて、ヴァイオリンが第1主題を示す。モットーの持つヘ短調の響きが、表情に陰りを与えている。この主題は、ほぼ同じ形の動機が一瞬登場するシューマンの交響曲第1番「春」の第2楽章や、交響曲第3番「ライン」の第1楽章との関連を指摘されることもある。静かな経過句を経て9/4拍子となり、クラリネットが第2主題をイ長調で出す。この主題は、ワーグナーの歌劇『タンホイザー』の「ヴェーヌスベルクの音楽」と共通点があるとも指摘される。主題の後には第2交響曲の基本動機も顔を出す。提示部は反復指定があるが、ブラームスの他の交響曲に比べて実行される頻度はやや高い。展開部は情熱的に始まり、低弦が第2主題を暗い嬰ハ短調で奏する。静まると、ホルンがモットーに基づく旋律を大きく示す。第1主題の動機を繰り返しながら高まって、再現部に達する。コーダでは、モットーと第1主題が絡み合うが、収拾されて静まる。モットーが響くなか、第1主題が消え入るように奏されて終わる。

第2楽章 Andante ハ長調。4/4拍子。自由な三部形式あるいは自由なソナタ形式と見られる。
第1主題はクラリネットとファゴットのひなびた旋律。各フレーズの終わりでモットーが示される。この第1主題に含まれる、3度をゆらゆらと反復する動機も目立つ。第2主題は同じくクラリネットとファゴットが新たにコラール風の旋律を奏する。ヴァイオリンの新しい旋律(コデッタ主題)に受け継がれてから、経過的な展開部に入る。この楽章を三部形式とみなす場合は第2主題およびコデッタの部分が中間部に相当する。展開部は比較的小規模で第1主題の断片を奏して再現部を導く。第2主題の再現は省略され、コーダでは第1主題が静かにクラリネットで奏されてから曲が終わる。
第3楽章 Poco allegretto ハ短調。3/8拍子。三部形式。
木管のくぐもったような響きの上に、チェロが憂愁と憧憬を湛えた旋律を歌う。全曲でもよく知られる部分である。中間部は変イ長調で、木管の夢見るような柔らかな表情が特徴的。主部の旋律はホルンによって再現される(なお、この楽章で使用されている金管楽器はホルン2本のみである)。

第4楽章 Allegro - Un poco sostenuto ヘ短調-ヘ長調。2/2拍子。自由なソナタ形式。
ファゴットと弦が第1主題を示す。トロンボーンの同音反復に導かれて、第2楽章のコラール風動機が奏される。直後に、音楽は激しくなり情熱的にすすむ。第2主題はハ長調、チェロとホルンによる三連符を用いたもの。小結尾はハ短調となる。展開部は第1主題を専ら扱うもので第1主題の再現を兼ねている。ゆえにここから再現部と見なすこともある。コラール風の動機が強奏で繰り返され、ハ短調から半音ずつずり上がってヘ長調に達し、一転ヘ短調となる。コーダに入ると、第1主題が表情を変えながら繰り返され、やがてヘ長調に転じる。モットーが現れ、弦の細かな反復する動きに乗って、コラール風の動機が示される。最後には第1楽章第1主題が回想され、静かに曲を閉じる。

交響曲第3番 (ブラームス)

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