ブラームス:交響曲 第1番 ハ短調 作品68

指揮: スタニスワフ・スクロヴァチェフスキ Stanislaw Skrowaczewski
フランクフルト放送交響楽団 Frankfurt Radio Symphony Orchestra
フランクフルト・旧オペラ座 Alte Oper Frankfurt, 22. Marz 2013

 

ヨハネス・ブラームスの交響曲第1番ハ短調作品68(ドイツ語:Sinfonie Nr. 1 in c-Moll, op. 68)は、ブラームスが作曲した4つの交響曲のうちの最初の1曲である。ハンス・フォン・ビューローに「ベートーヴェンの交響曲第10番」と呼ばれ高く評価された。「暗から明へ」という聴衆に分かりやすい構成ゆえに、第2番以降の内省的な作品よりも演奏される機会は多く、最もよく演奏されるブラームスの交響曲となっている。

ブラームスは、ベートーヴェンの9つの交響曲を意識するあまり、管弦楽曲、特に交響曲の発表に関して非常に慎重であったことで知られている。最初の交響曲は特に厳しく推敲が重ねられ、着想から完成までに21年という歳月を要した労作である。
この作品は、ベートーヴェンからの交響曲の系譜を正統的に受け継いだ名作として聴衆に受け入れられ、交響曲の歴史上でも最も偉大な一曲という意味で、指揮者のビューローには「ベートーヴェンの第10交響曲」と絶賛された。もっともこの言葉は、ベートーヴェンの影響下から全く脱しきれていないという皮肉の意味に解釈することもできる。
この交響曲はハ短調で書かれているが、これはベートーヴェンの交響曲第5番(運命)と同じである。また、第4楽章の第1主題はベートーヴェンの交響曲第9番第4楽章の「歓喜の歌」を思わせるものとなっている。ブラームスもそのことを十分意識していたととれる発言を残している。これも「暗黒から光明へ」というベートーヴェン的な交響曲を意識したためであると言われている。
ベートーヴェン的な高度な構成力から「ベートーヴェンの第10交響曲」と評され、ロマン派全盛時代に古典回帰を試みた新古典主義の代表的作品と、かつてはいわれた。しかし、やがて一時代を築くことになる新古典主義運動の全盛時代を経験した現代的視点から見ると、オーケストラや和声の扱い、曲の構成などにおいて、この曲はまぎれもなくロマン派の特徴を備えているということがわかる。例えば、第1楽章冒頭の、ティンパニの強打に支えられた、高音域のヴァイオリンによる半音階的な旋律にも既にそのような特徴を見て取れる。
交響曲の定石通り4つの楽章で構成されているが、舞曲(メヌエットまたはスケルツォ)に相当する楽章を欠いている。また、楽章の調の構成は、5度の関係を基本とした古典的なものではなく、3度関係の調となっている(ハ短調-ホ長調-変イ長調-ハ長調)。
全曲を通して、「C-C♯-D」の半音階進行が曲を統一するモティーフとして重要な役割を果たしている。

第1楽章 Un poco sostenuto - Allegro ハ短調、序奏付きのソナタ形式(提示部反復指定あり)、6/8拍子(9/8拍子)
ティンパニとコントラファゴット、コントラバスといった低音楽器のC音の強いオスティナートに、ヴァイオリン、チェロの上向する半音階的な旋律と木管とホルン、ヴィオラの副旋律が交錯する印象的な序奏で始まる。この序奏はアレグロの主部よりも後に作曲されて追加されたものである。主旋律に含まれる半音階進行は、楽章の至る所に姿を現す。提示部には繰り返し記号があり、かつては繰り返して演奏されることはあまりなかったが、近年は繰り返しが行われる例も増えている。ソナタ形式の型通りに進行した後、終結部でも、「運命」のモットーの動機がティンパニと低音のホルンによるC音の連打に支えられ、ハ長調で静かに終結する。

第2楽章 Andante sostenuto ホ長調、複合三部形式、3/4拍子 緩徐楽章。
終末部ではホルンとオーボエ、そしてヴァイオリン(第一ヴァイオリンの首席奏者、すなわちコンサートマスターが弾くことが定石)のソロがある。オーボエは主部と余りコントラストの付かないトリオ、ヴァイオリンは後の主部でそれぞれ演奏され、最後は消え入るように終わる。ホ長調という本来ならば明朗で輝かしいはずの調性で書かれているにもかかわらず、いかにもブラームスらしい孤独の影を宿した渋くわびしい色調に楽章全体が支配されている。この楽章には「カールスルーエ初稿版」があって、ノイホルトの指揮による録音があり、かなり曲の構成が違う。楽譜はヘンレ社の付録として見る事ができる。

第3楽章 Un poco allegretto e grazioso 変イ長調、複合三部形式、2/4拍子
間奏曲ふうの短い楽章。古典的な交響曲の形式にのっとれば、ここにはメヌエットかスケルツォが置かれるべきだが、ブラームスは4つの交響曲のすべてにおいて典型的な三拍子舞曲の第3楽章を置かなかった(第4番においてようやく本格的なスケルツォが登場するが、やはり二拍子である)。とはいえ「グラツィオーソ(優雅に)」という楽想指示には、メヌエット的な性格の楽章であるという作曲者の意図が現れている。中間部でベートーヴェンの「歓喜の歌」に暗示らしきものが出てきて更に断片として明確になる。フィナーレ楽章の主題の予告である。

第4楽章 Adagio - Piu andante - Allegro non troppo, ma con brio - Piu allegrob ハ短調→ハ長調、序奏付きのソナタ形式(ただし展開部を欠く)4/4拍子
冒頭はハ短調で、第1楽章の序奏の気分が回想されながら、第1主題が断片的に予告される。弦楽器のピチカートと交互に発展しながら凄い嵐になり収まったところで序奏の第2部に入る。序奏の第2部ではハ長調に転じ、アルペンホルン風の朗々とした旋律と、トロンボーン・ファゴットによるコラールが聞こえる。なお、このアルペンホルンの主題はクララ・シューマンへの愛を表しているとされ、クララへ宛てた誕生日を祝う手紙の中で"Hoch auf'm Berg, tief im Tal, grus ich dich viel tausendmal"(「高い山から、深い谷から、君に何千回も挨拶しよう」)という歌詞が付けられている。

ブラームス:交響曲第1番

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