ブラームス:交響曲 第1番 ハ短調 作品68 第1楽章 & 第4楽章

指揮: 岩城宏之 Hiroyuki Iwaki
オーケストラ・アンサンブル金沢 Orchestra Ensemble Kanazawa
2005.03.22. Tokyo, Suntory Hall

ヨハネス・ブラームスの交響曲第1番ハ短調作品68(ドイツ語:Sinfonie Nr. 1 in c-Moll, op. 68)は、ブラームスが作曲した4つの交響曲のうちの最初の1曲である。ハンス・フォン・ビューローに「ベートーヴェンの交響曲第10番」と呼ばれ高く評価された。「暗から明へ」という聴衆に分かりやすい構成ゆえに、第2番以降の内省的な作品よりも演奏される機会は多く、最もよく演奏されるブラームスの交響曲となっている。

第1楽章 Un poco sostenuto - Allegro ハ短調、序奏付きのソナタ形式(提示部反復指定あり)、6/8拍子(9/8拍子)
ティンパニとコントラファゴット、コントラバスといった低音楽器のC音の強いオスティナートに、ヴァイオリン、チェロの上向する半音階的な旋律と木管とホルン、ヴィオラの副旋律が交錯する印象的な序奏で始まる。この序奏はアレグロの主部よりも後に作曲されて追加されたものである。主旋律に含まれる半音階進行は、楽章の至る所に姿を現す。提示部には繰り返し記号があり、かつては繰り返して演奏されることはあまりなかったが、近年は繰り返しが行われる例も増えている。ソナタ形式の型通りに進行した後、終結部でも、「運命」のモットーの動機がティンパニと低音のホルンによるC音の連打に支えられ、ハ長調で静かに終結する。

第4楽章 Adagio - Piu andante - Allegro non troppo, ma con brio - Piu allegro ハ短調→ハ長調、序奏付きのソナタ形式(ただし展開部を欠く)4/4拍子
冒頭はハ短調で、第1楽章の序奏の気分が回想されながら、第1主題が断片的に予告される。弦楽器のピチカートと交互に発展しながら凄い嵐になり収まったところで序奏の第2部に入る。序奏の第2部ではハ長調に転じ、アルペンホルン風の朗々とした旋律と、トロンボーン・ファゴットによるコラールが聞こえる。なお、このアルペンホルンの主題はクララ・シューマンへの愛を表しているとされ、クララへ宛てた誕生日を祝う手紙の中で"Hoch auf'm Berg, tief im Tal, grus ich dich viel tausendmal"(「高い山から、深い谷から、君に何千回も挨拶しよう」)という歌詞が付けられている。
管弦楽全体が休止し序奏が終わると、弦楽合奏が第1主題を演奏し始める。主部はハ長調でソナタ形式に基づくが、再現部の第1主題部に展開部を重ねたような独特の形式を持つ。第1主題は歌曲風であり、16小節からなる二部形式の明確な楽節構造をとっている。この交響曲のそれまでの部分は、構造をあえて不明瞭にしている部分が多いが、それとは好対照をなす明晰さである。さらに、ハ長調という誠実さを象徴するかのような調が選ばれており、借用和音などを効果的に使いながら、感動的に歌い上げている。この部分はしばしばベートーヴェンの第九における歓喜の歌との類似性も指摘される。第2主題は例のアルペン・ホルンの動機「EDCG」のCをFisにおきかえたもので、これも弦楽合奏に演奏される。小結尾はホ短調となり高揚的な新しい句が登場し、提示部のクライマックスを形成していく、それがひとしきり終わると、再び提示部と同じように第1主題が再現する。木管に受け継がれた後、序奏部および提示部の要素を盛り込んで展開部らしい楽想になりここでもクライマックスを築いていく。その頂点で序奏部のアルペンホルンの旋律が回帰し、第2主題部、小結尾が型通りに続く。コーダは、ピウ・アレグロ 2/2拍子となり、「CHC」を中心に、4音下降組み合わされて進み、序奏のトロンボーンとファゴットのコラールがファンファーレとして全オーケストラに奏でられると、今度は 「GAG」 が中心となり、最後に第1楽章第1主題末尾の 「AAsFisG」が回帰し、再び「CHC」がでてきてハ長調の主和音が4回打ちつけられ、華やかに曲を閉じる。

ブラームス:交響曲第1番 解説

inserted by FC2 system