シューマン:ピアノ協奏曲 イ短調 作品54

指揮: アントニオ・パッパーノ Antonio Pappano
ローマ聖チェチーリア音楽院管弦楽団 Orchestra dell'Accademia Nazionale di Santa Cecilia
ピアノ: マルタ・アルゲリッチ Martha Argerich
Rome, 19 November 2012

 

ロベルト・シューマンのピアノ協奏曲イ短調は1845年に完成された。作品番号は54。
シューマンはこの曲の前にいくつかピアノ協奏曲の作曲に取り掛かっていた。1828年に変ホ長調の協奏曲の作曲を始め、1829年から1831年にかけてはヘ長調の協奏曲に取り組み、1839年にはニ短調の協奏曲を一楽章のみ完成させた。しかし、これらの曲はいずれも完成しなかった。未完になった理由には、作曲者自身のオーケストレーションの腕前の未熟さもあると言われている。
1841年、シューマンは後にピアノ協奏曲の第1楽章となる『ピアノと管弦楽のための幻想曲』を作曲し、1845年には間奏曲とフィナーレの2楽章を加えて曲として完成させた。この曲はシューマンの作曲した唯一のピアノ協奏曲となった。
曲は3楽章からなり、第2楽章と第3楽章の間は休みなしに演奏される。

Ⅰ Allegro affettuoso (速く やさしく,愛情を持って)
冒頭はイ短調属調長調のホ長調の強奏。鋭い付点リズムでピアノが応え、主題につながる。第1主題は木管の素朴な響きが印象的。オーボエがC-H-Aの主題を印象付ける。 展開部はもともと『幻想曲』であったこともあり、非常に自由である。変イ長調の夜想曲風の変奏がやはりC-H-Aの主題を印象付ける。冒頭序奏の鋭いリズムが同調で現れ、気分を変える。しかし、展開部全体は協奏曲の建前上短い。 再現部でイ長調の昂揚が終わると、カデンツァが作り付けになっている。技巧的には極端なものではないが対位法的処理が多く、作曲技術としても充実した内容になっている。コーダはC-H-Aの主題を木管が執拗に繰り返す中、ピアノはオブリガートに徹している。

Ⅱ Intermezzo; Andante grazioso 間奏曲と題された、落ち着いたヘ長調楽章。A-B-C-Dのつぶやくような進行。木管で応答があり繰り返される。最後に前楽章主題のC-H-Aが短調長調で現れ、循環形式による楽章間の調整を図っている。当然次楽章とは切れ目がない。第1楽章の動機 (C-H-A) が管楽器で繰り返される。全楽章の統一を意識している。第3楽章との連絡に活用している点に作曲者の大家としての技術が光っている。

Ⅲ Finale;Allegro vivace 4分の3拍子。堂々と律動的な第1主題。イ長調の華やかな曲想が作曲技術に凝りすぎだという批判を和らげている。ホ長調のヘミオラが登場する。不思議に落ち着いた演出をしている。管弦楽とピアノが時にオブリガートを互いに務めるという凝った構成である。終結はピアノのトッカータ的演奏と打楽器とが曲想を盛り上げる。

ピアノ協奏曲 (シューマン)

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