シューベルト:歌曲集「冬の旅」"Winterreise" 第20曲 - 第24曲(終曲)

バリトン:ハンス ホッター Hans Hotter
ピアノ:ジェラルド ムーア Gerald Moore

 

20. 道しるべ Der Wegweiser
町へ続く道しるべを見つけるが、それを避け人の通らない道を行こうとする。若者は死を目指している。詩の最後に出てくる「誰も帰ってきたことのない道」Die noch keiner ging zuruck.とは、墓場へ通ずる道のこと。ジェラルド・ムーアは著書の中でこの曲の前奏の「歩み」が第5小節の主和音で阻まれる問題点を指摘、シューベルトに対する「不敬罪」ではあるが、と断りを入れた上で第5小節を削除する提案を行っている。

24. 辻音楽師 Der Leiermann
村はずれで一人の年老いた辻音楽師と出会う。虚ろな眼で、ライアー(ハーディ・ガーディ)を凍える指で懸命に回している。聴く者もなく、銭入れの皿も空のまま。しかし周りに関心を示さず、ただ自分ができることを、いつまでも続けている。若者は自分と同じ境遇に置かれた孤独な人間と出会い、僅かな希望を見出す。『老人よ、お前についていこうか、僕の歌に合わせてライアーを回してくれるかい?』という問いかけで全曲を閉じる。全曲を通じて空虚五度が、オスティナートとして一貫して奏される。ライアーの正確な描写であると同時に、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウが指摘するように、語らないことによって多くを語る音楽である。この虚無の表現はおおよそ他の作曲家にはなしえない、究極的な音楽表現である(ディースカウはこれに関連して、これに類似する音楽は、世界中を探しても、恐らく日本の能楽以外にはないのではないか、と述べている。)。ブラームスは作品113の『13のカノン』第13曲「もの憂い恋のうらみ(Einformig ist der Liebe Gram)」(作詞:リュッケルト)にこの曲のメロディを使っている。

この曲は録音が非常に多く、多くが男声で歌われる。代表的なものとしてはバリトンのディートリヒ・フィッシャー=ディースカウと、バス・バリトンのハンス・ホッターによるものが挙げられる。前者は7回にわたって録音を残していて、技巧的な歌唱が特徴。後者は素朴で叙情的な歌唱で、1954年の録音(伴奏:ジェラルド・ムーア)が高く評価されることが多い。 また、SP時代のものではバリトンのゲルハルト・ヒュッシュ(伴奏:ハンス・ウド=ミュラー)のものが名盤とされている。

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