シューベルト:歌曲集「冬の旅」第24曲「辻音楽師」"Der Leiermann"

バリトン: フィッシャー=ディースカウ Dietrich Fischer-Dieskau
ピアノ: アルフレッド・ブレンデル Alfred Brendel

 

24. 辻音楽師 Der Leiermann
村はずれで一人の年老いた辻音楽師と出会う。虚ろな眼で、ライアー(ハーディ・ガーディ)を凍える指で懸命に回している。聴く者もなく、銭入れの皿も空のまま。しかし周りに関心を示さず、ただ自分ができることを、いつまでも続けている。若者は自分と同じ境遇に置かれた孤独な人間と出会い、僅かな希望を見出す。『老人よ、お前についていこうか、僕の歌に合わせてライアーを回してくれるかい?』という問いかけで全曲を閉じる。 全曲を通じて空虚五度が、オスティナートとして一貫して奏される。ライアーの正確な描写であると同時に、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウが指摘するように、語らないことによって多くを語る音楽である。この虚無の表現はおおよそ他の作曲家にはなしえない、究極的な音楽表現である(ディースカウはこれに関連して、これに類似する音楽は、世界中を探しても、恐らく日本の能楽以外にはないのではないか、と述べている。)。

シューベルト:歌曲集「冬の旅」

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