コントラルト: ナタリー・シュトゥッツマン Nathalie Stutzmann
ピアノ: インゲル・ゼーデルグレン Inger Södergren
菩提樹の前を通り過ぎる。かつて若者はこの木陰でいつも甘い思い出にふけっていた。枝の不気味なざわつきが、若者を誘う。場所を離れ何時間経ってもまだざわつきが耳から離れない。
本歌曲集のなかでは特に有名な歌曲である。ホ長調の甘い旋律は自治体の放送にも使われる。イギリスのシューベルト研究家、リチャード・キャペルは、「ほとんど歌えないほど美しい」と述べている。
近藤朔風訳 菩提樹
泉に添いて 茂る菩提樹
したいゆきては うまし夢見つ
みきには彫(え)りぬ ゆかし言葉
うれし悲しに といしそのかげ
今日もよぎりぬ 暗きさよなか
まやみに立ちて まなこ閉ずれば
枝はそよぎて 語るごとし
来よいとし友 此処に幸(さち)あり
おもをかすめて 吹く風寒く
笠は飛べども 捨てて急ぎぬ
はるかさかりて たたずまえば
なおもきこゆる 此処に幸あり
此処に幸あり