シューベルト:歌曲集「冬の旅」"Winterreise" 第24曲 辻音楽師 Der Leiermann

コントラルト: ナタリー・シュトゥッツマン Nathalie Stutzmann
ピアノ:インゲル・ゼーデルグレン Inger Södergren

24. 辻音楽師 Der Leiermann
「ライアー回し」と訳されることも多い。村はずれで一人の年老いた辻音楽師と出会う。虚ろな眼で、ライアー(ハーディ・ガーディ)(手回しオルガン)を凍える指で懸命に回している。聴く者もなく、銭入れの皿も空のまま。しかし周りに関心を示さず、ただ自分ができることを、いつまでも続けている。若者は自分と同じく世界の全てに拒絶されるという境遇に置かれた孤独な人間と出会い、僅かな希望を見出す。『老人よ、お前についていこうか、僕の歌に合わせてライアーを回してくれるかい?』という問いかけで全曲を閉じる。全曲を通じて空虚五度が、オスティナートとして一貫して演奏される伴奏はライアーの描写であり、レツィタティーフの様式の歌は旅人の独り言である。

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウは、語らないことによって多くを語る音楽であると解説している。またフィッシャー=ディースカウはこれに関連して、これに類似する音楽は、世界中を探しても、恐らく日本の能楽以外にはないのではないか、と述べている。ジェラルド・ムーアは「この曲の偉大さを認めながらもその理由を説明することができないという点において奇跡であり、シューベルトの魔術の最高例」と評している。リチャード・カペルは「何度考えても、最後の歌がこのようなものであろうとは誰も考えなかったであろう」と語っている。ジェラルド・ムーアは最後のフレーズに続く伴奏のフォルテの指示(第58小節)について「認めがたく、不適切であり、程度が増せばますほど嘆かわしい」と述べている。:ブラームスは作品113の『13のカノン』第13曲「もの憂い恋のうらみ(Einformig ist der Liebe Gram)」(作詞:リュッケルト)にこの曲のメロディを使っている。

歌曲集「冬の旅」の代表的な録音
この曲は録音が非常に多く、多くが男声で歌われる。代表的なものとしてはバリトンのディートリヒ・フィッシャー=ディースカウと、バス・バリトンのハンス・ホッターによるものが挙げられる。前者は7回にわたって録音を残していて、技巧的な歌唱が特徴。後者は素朴で叙情的な歌唱で、1954年の録音(伴奏:ジェラルド・ムーア)が高く評価されることが多い。 また、SP時代のものではバリトンのゲルハルト・ヒュッシュ(伴奏:ハンス・ウド=ミュラー)のものが名盤とされている。

数少ない女声の録音の中では、メッゾ・ソプラノのクリスタ・ルートヴィヒやブリギッテ・ファスベンダー Brigitte Fassbaender 、アルトのナタリー・シュトゥッツマンによるものなどが高い評価を受けている。

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バリトンのハンス・ホッターは、 特にシューベルトの『冬の旅』、『白鳥の歌』が広く愛聴されているが、バス・バリトンという自身の声域からレパートリーを制限し、『美しき水車小屋の娘』などは歌わなかった。
引退後、ミュンヘンのホッターのもとにはさまざまな歌手が勉強に訪れ、クリスタ・ルートヴィヒが女性が『冬の旅』を歌う事について尋ねた際には「良いと思うよ。私は『女の愛と生涯』を歌おうとは思わないけど」と語った。後にナタリー・シュトゥッツマンも『冬の旅』を勉強しにホッターのもとを訪れている。

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