シューベルト:歌曲集「冬の旅」"Winterreise" 第1曲 ~ 第5曲

テノール:ペーター・シュライアー Peter Schreier
ピアノ:スヴャトスラフ・リヒテル Sviatoslav Richter

1. おやすみ Gute Nacht
冬の夜、失恋した若者は、恋人の住んでいる町から去っていく。若者は恋人とすごした春の回想にふけるが、今は冷たい雪に覆われた冬。若者は自分がただのよそ者であると感じ、あてもない旅に出ようとする。恋人の家の扉に「おやすみ」と書き残し、旅に出る。 「冬の旅」全曲の序曲ともいうべき曲。この若者が出ていくのは、恋人の住んでいる家から、なのか、恋人が住んでいる家の前を通った時に、「おやすみ」と記したのか、という点について評論家の梅津時比古は、通りかかった時では、長調に転調してからの「君の眠りを妨げないように/そっと、そっと扉を閉めよう」の意味がわからなくなるため、恋人の住む家から出ていく、と解釈している。
2. 風見の旗 Die Wetterfahne
恋人の家の風見の旗が揺れている。風に翻る旗に恋人の嘲笑が重なり、全ての破局の原因は恋人の不実に満ちた裏切りにあったことに今更ながら気付く。
3. 凍った涙 Gefrorne Tranen
涙が頬を伝わり、自分が泣いていることに気づき、心情を歌う。
4. 氷結 Erstarrung
泣きながら恋人への思いを爆発させる。涙で冬の冷たい氷を全て溶かしたいと歌う。この歌曲集で最も歌詞の繰り返しが多く、繰り返しの構造の中で一つの詩節が次の詩節と融合してクライマックスと向かっていく様を、ジェラルド・ムーアは著書の中で「建築の奇跡」と呼んだ。
5. 菩提樹 Der Lindenbaum
菩提樹の前を通り過ぎる。かつて若者はこの木陰でいつも甘い思い出にふけっていた。枝の不気味なざわつきが、若者を誘う。場所を離れ何時間経ってもまだざわつきが耳から離れない。 本歌曲集のなかでは特に有名な歌曲である。ホ長調の甘い旋律は自治体の放送にも使われる。 イギリスのシューベルト研究家、リチャード・キャペルは、「ほとんど歌えないほど美しい」と述べている。
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