シューベルト:歌曲『さすらい人』"Der Wanderer" D 493 (D 489)

バリトン:ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ Dietrich Fischer-Dieskau
ピアノ:ジェラルド・ムーア Gerald Moore
Live recording, Salzburg, 1963

『さすらい人』(Der Wanderer) D493 (D489)は、フランツ・シューベルトによる歌曲。詩はシュミット・フォン・リューベックによる。この世のいずこにも幸福を見いだせぬさすらい人の心が歌われた、シューベルト若き日の楽曲である。出版された時は「不幸な男」というタイトルであった。また、主人公が理想の国を追い求めて歌う途中の主題(詩で言うと第2節の部分)は、1822年出版の『さすらい人幻想曲』に引用された。
また、シューベルトには同じく「さすらい人」と題する、フリードリヒ・シュレーゲルの詩による歌曲(D649)がある。

嬰ハ短調、4分の4拍子。三連符の重苦しい前奏で始まり、「山を越え、この地にやってきた」と歌い始められる。それを受けて、「自分は自分自身の安息できる地を、ため息をつきながら探してきた」と歌われ(この部分が『さすらい人幻想曲』に引用されている)、そこから同主長調のホ長調に転調し、「どこにあるのか、私の国は、私の祖国となる国、私自身の言葉が話されている国は」と、早いテンポで歌われるが、すぐに冒頭の雰囲気に戻り、最後に「この世ならぬ声が『お前のいないところにその国はある』と答えた」と結ばれる。

シューベルト:歌曲「さすらい人」

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