シューベルト:八重奏曲 Octet ヘ長調 D 803

Ensemble Q
吉本奈津子 Natsuko Yoshimoto & Anne Horton violins,
Imants Larsens viola, Trish Dean cello, Phoebe Russell double bass,
Paul Dean clarinet, David Mitchell bassoon, Peter Luff French horn.
2020 performance at Queensland Conservatorium Theatre クイーンズランド音楽学校

八重奏曲 ヘ長調 D803は、フランツ・シューベルトが1824年3月に作曲した作品。当時の著名なクラリネット奏者フェルディナント・トロイヤー伯爵の委嘱に応じて着手された。弦楽四重奏曲《ロザムンデ》や《死と乙女》と同時期の作品で、シューベルトの円熟期を代表する傑作の1つである。反面、これらが短調を採り、哀調や悲愴感を称えているのに対して、長調の《八重奏曲》はシューベルトの明るく暖かくて柔和な一面を表している。

構成
以下の6つの楽章から成り、演奏に1時間ほどを要する。楽章数の多さや所要時間からすると、室内楽というよりはセレナーデやディヴェルティメントとの結びつきが強い。

本作はシューベルトの室内楽の中では楽器編成が最も大きく、クラリネット1、ファゴット1、ホルン1、ヴァイオリン2、ヴィオラ1、チェロ1、コントラバス1が起用されている。第3楽章と第5楽章のメヌエットの順番が入れ替わり、第6楽章の提示部反復がない点はあるものの、ベートーヴェンの《七重奏曲》作品20をモデルにしたことは間違いなく、そこに第2ヴァイオリンを付け加えたものと考えられる。初演でイグナーツ・シュパンツィヒが担当した第1ヴァイオリンには高度な技巧が要求される。

第1楽章の主題は自作の歌曲《さすらい人》から派生している。第4楽章の主題には自作のジングシュピール『サラマンカの友人たち(Die Freunde von Salamanka)』第2幕の、ラウラとディエゴの愛の二重唱("Gelagert unter'm hellen Dach der Baume")のメロディが使われている。

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