メンデルスゾーン:交響曲 第4番 「イタリア」作品90

指揮: クシシュトフ・ウルバンスキ Krzysztof Urbanski
ケルン・WDR交響楽団
2020年11月6日にケルン・フィルハーモニーホール(無観客・演奏会)

メンデルスゾーンの交響曲は全部で17曲におよぶが、はじめの「弦楽のための交響曲」12曲は弦楽合奏用の習作的なものであり、その後の5曲が番号付き交響曲として数えられる。「第4番」は出版順であり、「イタリア」は5曲のなかでは第1番、第5番「宗教改革」に次いで実質3番目に完成された。「イタリア」の後の作曲順は、第2番「賛歌」、第3番「スコットランド」となる。
イタリア旅行中に書き始められたこの曲は、躍動的なリズム、叙情と熱狂、長調と短調の交錯による明暗の表出が特徴的で、メンデルスゾーンの交響曲のなかでももっとも親しまれている。最終楽章にイタリア舞曲のサルタレロが取り入れられているが、これ以外には具体的にイタリアの音楽を素材としてはおらず、標題音楽的な要素も認められない。演奏時間約24分。
 
第1楽章 アンダンテ・コン・モート イ短調 3/4拍子 - アレグロ・ウン・ポコ・アジタート イ短調 6/8拍子 序奏付きのソナタ形式。
序奏は、幻想的かつ悲劇的な旋律で始まる。旋律の初め、属音から主音に4度跳躍して順次上行する4音からなる音型は、各楽章の主題と関連があり、全曲の基本動機的な役割を果たしている。序奏はかなり長く、物語るように発展するが、やがて始めの旋律に戻り、主部に入る。
主部は弦とクラリネットが弱音で第1主題を提示する。主題は序奏動機に基づき、繰り返しながら急激に盛り上がる。第2主題はホ短調、クラリネットで奏されるが、弦の第1主題の動機が絡んでいるためにあまり目立たない。小結尾では弦に詠嘆的な旋律が現れる。提示部は繰り返し指定があるが、実際に繰り返す演奏は少ない。展開部は弦の長く延ばした響きで開始され、各主題を扱う。再現部は短縮されている。コーダは展開部と同じように始まり、すぐに激しく興奮するが、やがて序奏の主題が戻ってきて静かに楽章を締めくくる。
第2楽章 ヴィヴァーチェ・ノン・トロッポ ヘ長調 2/4拍子 ソナタ形式。
スケルツォ風の楽章。短い前奏につづいて、木管がスコットランド民謡を思わせる旋律を示す。これが第1主題で、第1楽章の序奏主題の動機に基づく。第2主題はハ長調、弦のスタッカートで順次下行する。展開部では第1主題を主に扱い、各楽器がこの主題を追いかけるように奏し合う。再現部では第2主題が強奏されて効果を上げる。
 
第3楽章 アダージョ イ長調 2/4拍子 簡略化されたソナタ形式。
短い序奏があり、イ短調からイ長調に変わる。主部は、歌謡的な第1主題と葬送行進曲風の第2主題が交互に現れる。
 
第4楽章 アレグロ・ヴィヴァチッシモ イ短調 2/2拍子 - アレグロ・マエストーソ・アッサイ イ長調 6/8拍子 ソナタ形式。
低弦が激しくリズムを刻み、ヴァイオリンが広い音域を上下する第1主題を示す。経過句では、弦によって推進的なリズムが現れる。第2主題はホ短調、木管楽器で出されるが、弦によるハ長調の勇壮な対句を伴っている。この主題も第1楽章の序奏主題と関連がある。展開部では、第1主題と経過句の動機が主に扱われる。再現部は短縮され、コーダに入ると、第1主題に基づいて激しく高まるが、波が引くように静まって、第2主題が寂しげに奏され、いったん全休止となる。テンポを落として6/8拍子になり、低弦が新しい旋律をイ長調で大きく歌う。これも第1楽章の序奏主題の動機が組み込まれている。この新しい主題によって壮大に高まり、全曲を明るく結ぶ。

メンデルスゾーン:交響曲第4番イ長調『イタリア』

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