日本の歌:椰子の実

作詞:島崎藤村、作曲:大中寅二
歌: 鮫島 有美子

「椰子の実」(やしのみ)は島崎藤村が執筆した詩である。1901年(明治34年)8月に刊行された詩集「落梅集」に収録されている。
この詩は1898年(明治31年)の夏、1ヶ月半ほど伊良湖岬に滞在した柳田國男が浜に流れ着いた椰子の実の話を藤村に語り、藤村がその話を元に創作したものである。

名も知らぬ遠き島より 流れ寄る椰子の実一つ
 故郷(ふるさと)の岸を離れて 汝(なれ)はそも波に幾月
 
旧(もと)の木は生(お)いや茂れる 枝はなお影をやなせる
 我もまた渚を枕 孤身(ひとりみ)の 浮寝の旅ぞ
 
実をとりて胸にあつれば 新たなり流離の憂
 海の日の沈むを見れば 激(たぎ)り落つ異郷の涙
 
思いやる八重の汐々 いずれの日にか故国(くに)に帰らん

歌曲「椰子の実」
1936年(昭和11年)7月、日本放送協会大阪中央放送局で放送中だった『国民歌謡』の担当者が作曲家の大中寅二を訪問しこの詩に曲を付すよう依頼。7月9日には曲が完成した。

7月13日から東海林太郎の歌唱で1週間放送した。さらに8月3日からは二葉あき子、11月9日からは多田不二子、12月9日からは柴田秀子がそれぞれ放送した。こうした放送が影響し次第に職場や学校で歌われ始め、12月には東海林太郎の歌唱でポリドールレコードから発売された。

本人による混声合唱版・女声合唱版(ともにピアノ伴奏)が存在する。他に多くの人によってさまざまな編成に編曲されており、その中には作曲家の息子である大中恩によるものも含まれる。

2007年には「日本の歌百選」に選定されており、現在でも広く愛唱されている叙情歌である。

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