作詞・作曲: さだ まさし
歌: さだ まさし
防人の詩は、(作詩・作曲:さだまさし、編曲:渡辺俊幸)
映画『二百三高地』主題歌。同映画の音楽監督の山本直純がさだと同郷で交流があった縁で、さだに主題歌の依頼があった。さだは依頼時に映画の主題を知り、「二百三高地の何を描くんですか。要するに”勝った、万歳”を猫くんですか?」と尋ねた。それに山本は「そうじゃない。戦争の勝った負けた以外の人間の小さな営みを、ちゃんと浮き彫りにしていきたい。そういう映画なんだ」と返答し、さだはオファーを受けた。それでもなかなか歌ができず、最後には自身の主演映画『翔べイカロスの翼』のロケ現場に山本のマネージャーが押しかけ、その場で1番だけ制作、譜面に起こす時間もなかったためカセットテープに吹き込んで手渡した。翌日、山本から3番まで繰り返すよう指示があり、同じメロディーの繰り返しで追加の歌詞を作った。山本と監督の舛田利雄が曲を聴いた結果、劇中で挿入歌としてフルコーラスで流すことになり、尺を取るためにわざわざシーンを付け足した。
歌詞は『万葉集』第16巻第3852番に基づいて作られている。
Wikisource reference 『万葉集/第十六巻』- ウィキソース。
「鯨魚取 海哉死為流 山哉死為流 死許曽 海者潮干而 山者枯為礼」
読み:いさなとり うみやしにする やまやしにする しぬれこそ うみはしほひて やまはかれすれ
意味:海は死にますか 山は死にますか。死にます。死ぬからこそ潮は引き、山は枯れるのです。
本作はシングル発売および映画公開に先立ち、1979年のテレビ番組『さだまさし・ライブコンサート』(NHK)で披露された。ただしそのときは歌詞が3番までしかなく、4番以降はその後加筆されたものである。なお一時期、4番の歌詞の一部を変更して歌っていた。変更版「防人の詩」は谷村新司・さだまさしのジョイント・ライヴのアルバム『夢ライヴ』に収録されており、確認出来る。
映画では本シングル盤とは別のテイク(山本直純の編曲版)が用いられた。
1980年末の第31回NHK紅白歌合戦で披露された。さだは原則すべての楽曲をフルコーラスで披露する主義であり、前年の紅白でも「関白宣言」を間奏・エンディングの一部を省略するも歌詩はフルコーラスで歌唱していたが、本作については「前回はわがままを通したから」と、若干のカットを行った。
『二百三高地』が戦争肯定映画であると解釈されたこともあり、主題歌を作成したさだも「右翼」と批判された。さだは前年に「関白宣言」で「女性蔑視」だとバッシングされていたことから度重なる批判に落ち込んでいたが、文芸評論家の山本健吉は挽歌を引き合いに出し、「いなくなった人を歌うのは、日本の詩歌の伝統であって真髄である」「日本の詩歌の本道をちゃんととらえている」と擁護した。また、おすぎとピーコはさだを批判する発言をしていたが、さだとホテルで遭遇し、真意を聞かされて以降は「あんた、それを世間に言いなさいよ、あたしたち、まさしの味方になるから」とさだに理解を示すようになったという。
おしえてください
この世に生きとし生けるものの
すべての生命に限りがあるのならば
海は死にますか 山は死にますか
風はどうですか 空もそうですか
おしえてください
私は時折苦しみについて考えます
誰もが等しく抱いた悲しみについて
生きる苦しみと 老いてゆく悲しみと
病いの苦しみと 死にゆく悲しみと
現在の自分と
答えてください
この世のありとあらゆるものの
すべての生命に約束があるのなら
春は死にますか 秋は死にますか
夏が去る様に 冬が来る様に
みんな逝くのですか
わずかな生命の
きらめきを信じていいですか
言葉で見えない望みといったものを
去る人があれば 来る人もあって
欠けてゆく月も やがて満ちて来る
なりわいの中で
おしえてください
この世に生きとし生けるものの
すべての生命に限りがあるのならば
海は死にますか 山は死にますか
春は死にますか 秋は死にますか
愛は死にますか 心は死にますか
私の大切な故郷もみんな
逝ってしまいますか
海は死にますか 山は死にますか
春は死にますか 秋は死にますか
愛は死にますか 心は死にますか
私の大切な故郷もみんな
逝ってしまいますか