ストラヴィンスキー: バレエ音楽「春の祭典」Le sacre du printemps The rite of spring

指揮: ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン Jaap van Zweden
オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団 Radio Filharmonisch Orkest

 

『春の祭典』(はるのさいてん、原題フランス語:Le sacre du printemps, 英語:The rite of spring )は、ロシアの作曲家イーゴリ・ストラヴィンスキーがセルゲイ・ディアギレフが率いるバレエ・リュス(ロシア・バレエ団)のために作曲したバレエ音楽。1913年に完成し、同年5月29日に初演された。20世紀の近代音楽の傑作に挙げられる作品であり、複雑なリズムのクラスター、ポリフォニー、不協和音に満ちていて、初演当時怪我人も出る大騒動となったことで知られる。2部構成で、演奏時間は約34分。

春を迎えたある2つの村同士の対立とその終息、大地の礼賛と太陽神イアリロの怒り、そしてイアリロへの生贄として一人の乙女が選ばれて生贄の踊りを踊った末に息絶え、長老たちによって捧げられる、という筋である。場所などの具体的な設定は無く、名前があるのは太陽神イアリロのみである。キリスト教化される以前のロシアの原始宗教の世界が根底にあるといわれる。
この筋は友人の画家ニコライ・リョーリフ(レーリッヒ)が1910年4月28日付(ユリウス暦)の『ペテルブルク新聞』に発表したバレエの草案が元になっており、彼は台本と共に美術を担当した。この曲はリョーリフに献呈されている。ちなみに、ストラヴィンスキーの自伝には、彼自身が原案を思いついたと書かれているが、このことからわかる通り事実ではない。
各部の表題は1947年稿1967年版スコア(1967年稿ではない)では英語とフランス語のみ記載されているが、それ以前の版にはロシア語でも記載がある。それぞれ意味は同じではないので注意が必要である。下記の表題は英語版に従っている。

第1部 大地の礼賛
1.序奏 リトアニア民謡をベースにしたファゴットの非常に高音域のイ調独奏で始まる(C2)。古典的な楽器法に精通したサン=サーンスが酷評したこの部分は演奏が大変困難であり、田村和紀夫はドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」冒頭のフルート独奏と共に、楽器の得意でない音域を敢えて使用するという作曲家の意思を読み取っている。既に変拍子の幕開けとなり、様々な管楽器が異なる調性で全く違うニュアンスのメロディーを激しく演奏する。高潮しきった所で曲は途絶え、ファゴットが再び最初の旋律を嬰ト調で演奏する。ブーレーズは論文「ストラヴィンスキーは生きている」において「最も異様、かつ興味深い語法」と評した。
2.春のきざし(乙女達の踊り) ホ長調主和音(E, G#, B)と変イ長調属和音第1転回形(G, B♭, D♭, E♭)が複調で弦楽器を中心に同時に力強く鳴らされる同じ和音の連続とアクセントの変化による音楽。この和音構成は平均律上の異名同音で捉えると変イ短調和声短音階(G#, A#, B, C#, D#, E, G)と同じであるが、初めて聴くものには強烈な不協和音の印象を与える。また木管楽器によって対旋律として現れる(E, G, C, E, G, E, C, G)というスタッカートのアルペジオはハ長調を示し、これによって五度圏上で正三角形を成し長三度ずつの移調関係にあるハ長調、ホ長調、変イ長調が結ばれる。これはベートーヴェンの後期三大ピアノソナタ(あるいはもっと前の『ヴァルトシュタイン・ソナタ』や『ハンマークラヴィーアソナタ』なども)においても転調の過程で順次提示されるように既に援用が見られる調関係だが、同時に鳴らすのは音楽史上この曲が初めてであろう。
3.誘拐
4.春の輪舞 5.敵の部族の遊戯
6.長老の行進
7.長老の大地への口づけ 極めて短い。激しい不協和音が弦楽器のフラジオレットで奏される。
8.大地の踊り 音楽は絶頂の中、終結句を伴わず突然終止する。

第2部 生贄の儀式
1.序奏
2.乙女の神秘的な踊り
3.選ばれし生贄への賛美
4.祖先の召還
5.祖先の儀式
6.生贄の踊り(選ばれし生贄の乙女) 最も難曲かつ作曲学上システマティックに書かれた部分。5/8, 7/8などの変拍子が組み合わされて徹底的に複雑なリズムのポリフォニーを作り上げる。オリヴィエ・メシアンはこの部分を「ペルソナージュ・リトミック(リズムの登場人物)」[29]、ピエール・ブーレーズは「リズムの細胞」と、クラウス・フーバーは「リズムのクラスター」と呼んでそれぞれ分析結果を発表している。メシアンによればこの曲は、複雑な変拍子の中でそれぞれ提示されたリズム動機について、拡大する動機、縮小する動機、発展せず静的な動機の3つの類型のリズムから成り立つという。
1967年版決定稿では、曲の終了と同時にギロが鳴る。1947年以前の版は全て高音域へのアグレマンが閃いた後に、低音域への打撃という終止であったが、1967年版決定稿ではその二つが同時に鳴り響くラストへ改訂された。NAXOSに収録されたこのヴァージョンの楽譜は、R・クラフト蔵のため2011年現在も公刊されていない。

ストラヴィンスキー:春の祭典

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