デュカス: 交響詩『魔法使いの弟子』 The Sorcerer's Apprentice

指揮: ヴォルフガング・サヴァリッシュ Wolfgang Sawallisch
NHK交響楽団 NHK Symphony orchestra

 

交響的スケルツォ『魔法使いの弟子』(フランス語: L'apprenti sorcier, scherzo symphonique)は、フランスの作曲家ポール・デュカスが1897年に作曲した管弦楽曲。日本においては通例「交響詩『魔法使いの弟子』」と表記される。
極度の完璧主義者として知られ、自らが佳作と認めない作品は生前にすべて破棄してしまったデュカスは、わずかに13曲しか作品を遺していない。この作品はそのうちの1つであり、したがってデュカスの自信作のひとつである。デュカスの最も有名な作品として知られる。
ゲーテが、サモサタのルキアノスの詩『嘘を好む人たち Philopseudes』に基づき書き上げたバラード『魔法使いの弟子 Der Zauberlehrling』の仏語訳を原典としている。

詩の大意
老いた魔法使いが若い見習いに雑用を言い残し、自分の工房を旅立つところから物語が始まる。
見習いは命じられた水汲みの仕事に飽き飽きして、箒に魔法をかけて自分の仕事の身代わりをさせるが、見習いはまだ完全には魔法の訓練を受けていなかった。そのためやがて床一面は水浸しとなってしまい、見習いは魔法を止める呪文が分からないので、自分に箒を止める力がないことを思い知らされる。絶望のあまりに、見習いは鉈で箒を2つに割るが、さらにそれぞれの部分が水汲みを続けていき、かえって速く水で溢れ返ってしまう。もはや洪水のような勢いに手のつけようが無くなったかに見えた瞬間、老師が戻ってきて、たちまちまじないをかけて急場を救い、弟子を叱り付ける。

1940年にウォルト・ディズニーのアニメ映画『ファンタジア』に使用され、ミッキーマウスが「魔法使いの弟子」役を「演技」したことにより、いっそう有名になった。
ただしこのディズニー映画の音楽監督の1人は、ストコフスキーであり、この音源に使用されている演奏も、ストコフスキー編曲といっても差し支えないほど彼の手によって楽曲構成やオーケストレーションに変更が加えられている。したがってこの映画で聴けるのは、原曲そのものではないということに注意しなければならない(その他のストコフスキーの編曲とは、やや意味合いが異なるので、その点にも注意が必要である)。

作曲・初演
1897年に「ゲーテによる交響的スケルツォ」として脱稿し、デュカスの出世作となった。
ベルリオーズやワーグナーの流れを汲む華麗な管弦楽法、ベートーヴェンやブラームス、恩師フランクに影響された堅固な楽曲構成、畏友ドビュッシーに明らかに触発された全音音階の多用など、伝統的な要素とモダンな要素が相俟って、独特の魅力的な音響世界を作り出している。古典的な形式と新しい音楽語法との融合は、ラヴェルの成熟期の作風に先鞭をつけたと見なされている。

曲の構成
「スケルツォ」と題されてはいるが、スケルツォ楽章に伝統的な三部形式やロンド形式によってはおらず、非常に自由なソナタ形式(もしくはロンド・ソナタ形式)を下敷きとしている。緩やかな序奏に続いて、デュカスが好んだ9拍子による主部が続く。ヘ短調。演奏時間は10分強。
この作品の由来や構想については諸説あり、同世代のリヒャルト・シュトラウスに匹敵するような交響詩を目論んだものとして、描写的な標題音楽として解釈すべきだとする論と、厳格な楽曲構成に着目し、いずれ交響曲に発展する余地を残した作品だったのではないかとして、絶対音楽として解釈すべきだとする論がある。指揮者によってもこの交響的バラードをいずれに解釈すべきかは意見が分かれ、マルケヴィチやトルトゥリエが(おそらく前述のディズニー映画『ファンタジア』におけるストコフスキーの演奏に影響されて)描写的・標題的要素をかなり強調しているのに対して、シャルル・ミュンシュは主題の展開や統一性に重きを置いて、端正でひきしまった構築的な演奏例を示している。

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