モーツァルト:大ミサ曲 ハ短調 große Messe in C-moll K.427

指揮: ピエール・カオ Pierre Cao
室内管弦楽団: カメラータ・ザルツブルク Camerata Salzburg
古楽合唱団: アルシス・ブルゴーニュ Arsys Bourgogne
Solistes:ドロテー・ミールズ Dorothee Mields, Soprano  マリアン・キエラン Marianne Kielland, alto
Markus Schäfer, tenor  Tijl Faveyts, Basse

大ミサ曲 ハ短調 K. 427 (417a) は、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが作曲した未完成のミサ曲。資料によって「ミサ曲ハ短調」や「ハ短調ミサ曲」とも呼ばれる。また一連のミサ曲において17番目に当たることから「ミサ曲 第17番」と表記される場合もある。モーツァルトの宗教音楽では、レクイエムに次いで有名な曲である。

この曲はモーツァルトの作品としては珍しく、注文を受けずに自発的に作曲された。1782年8月4日にモーツァルトはウィーンの聖シュテファン教会でコンスタンツェ・ウェーバーと結婚したが、故郷ザルツブルクにいる父レオポルトの許可を得ないままであった。モーツァルトはこの曲を作ることによって、結婚の誓約が確かなものであることを証明し、妻が技量のあるソプラノ歌手であることをアピールするつもりであったという。

全体は未完のまま残されており、「キリエ」、「グローリア」、「サンクトゥス」、「ベネディクトゥス」はすでに完成されている。「クレド」は前半部分が未完の形で残されており、その第1部(クレド・イン・ウーヌム・デウム)は合唱とバスのパートが、続く第2部(エト・インカルナトゥス・エスト)は声楽部と管楽とバスが完成されている。しかしそれに続く「クルシフィクス」は書かれておらず、「アニュス・デイ」に至っては冒頭のみで欠落している。このためモーツァルトの没後になってから補筆が行われることになり、後述する下記のロビンス・ランドン版やバイヤー版などが存在する。

本曲は、確認されている限りモーツァルトが作曲した最後のミサ曲であるが、20世紀後半になって、モーツァルトが1780年代後半に「キリエ」などのミサ曲のスケッチを残していたことが判明し、死後発見されたミサの断章『キリエ ニ短調(K.341)(英語版)』は最晩年の1791年頃にシュテファン大聖堂宮廷楽長就任を目論んで書いたと考えられている。

編成
管弦楽:フルート2、オーボエ2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、弦五部、オルガン
独唱:ソプラノ2、テノール、バス
合唱:ソプラノ(S)、アルト(A)、テノール(T)、バス(B)の混声4部合唱(SSATBの5部合唱、SATB×2の二重合唱を含む)

構成
以下の5曲(アニュス・デイを除く)から構成される。現在演奏される版の演奏時間は50分ないし60分ほど。アメリカの音楽学者のロバート・レヴィンの完成版は全曲74分ほど。

第1曲 キリエ(Kyrie)完成。自筆譜が残されている。
アンダンテ・マエストーソ、ハ短調、4分の4拍子。ソプラノIの独唱と4部合唱。
第2曲 グローリア(Gloria)完成。自筆譜が残されている。全体は8つの部分に分けられる。
第1部 天のいと高きところには、神に栄光(Gloria in excelsis Deo)アレグロ・ヴィヴァーチェ、ハ長調、4分の4拍子。4部合唱。
第2部 我らは主をほめ(Laudamus te)アレグロ・アペルト、ヘ長調、4分の4拍子。ソプラノIIの独唱。
第3部 主の大いなる栄光のゆえに(Gratias agimus tibi)アダージョ、変ハ短調 - イ短調、4分の4拍子。5部合唱
第4部 神なる主(Domine Deus)アレグロ・モデラート、ニ短調、4分の3拍子。ソプラノI&IIの二重唱。
第5部 世の罪を除きたもう主よ(Qui tollis)ラルゴ、ト短調、4分の3拍子。二重合唱。
第6部 主のみ聖なり(Quoniam tu solus)アレグロ、ホ短調、4分の3拍子。ソプラノI&II、テノールの三重唱。
第7部 イエス・キリストよ(Jesu Christe)アダージョ、ハ長調、4分の3拍子。4部合唱。
第8部 聖霊とともに(Cum Sancto Spiritu)アレグロ、ハ長調、2分の2拍子。4部合唱。
第3曲 クレド(Credo)未完成。後生の研究者によって補筆されたものが演奏される。2つの部分に分けられる。
第1部 我は信ず、唯一の神(Credo in unum Deum)アレグロ・マエストーソ、ハ長調、4分の3拍子。5部合唱。
第2部 聖霊によりて(Et incarnatus est)アンダンテ、ヘ長調、8分の6拍子。ソプラノIの独唱。
第4曲 サンクトゥス(Sanctus)完成。パート譜をもとに再構成された。
ラルゴ - アレグロ・コモド、ハ長調、4分の4拍子。二重合唱。
第5曲 ベネディクトゥス(Benedictus)完成。パート譜をもとに再構成された。
アレグロ・コモド、イ短調、4分の4拍子。四重唱と二重合唱。
アニュス・デイ(Agnus Dei)未完成。スケッチのみが残っている。通常、演奏されない。未完成のままの補筆版

モーツアルト:大ミサ曲 ハ短調 K.427

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