モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第8番 イ短調 K.310

ピアノ独奏: エミール・ギレリス Emil Grigoryevich Gilels

 

ピアノソナタ第8番イ短調K.310は、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが作曲した、3楽章からなるピアノソナタである。モーツァルトのピアノソナタ作品の中では、珍しく短調で書かれている。モーツァルトのピアノソナタのうち短調で書かれている作品は、他にはピアノソナタ第14番ハ短調K.457のみである。

1777年、モーツァルトはザルツブルクを出て、母アンナと共にパリへ向かったが、パリで思ったような仕事が見つけられず、その上1778年7月に母を亡くしてしまう。悲劇的な曲調を持つこのピアノソナタ第8番はこの頃に書かれた作品であり、母親を亡くした悲しみが反映されているといわれている。同様の短調作品ヴァイオリンソナタ第28番もこの頃のもの。

第1楽章 Allegro Maestoso イ短調 4/4拍子 ソナタ形式。
緊張感のある悲劇的な主題で曲は始まる。16分音符が絶え間なく並び、速い指づかいが必要である。

第2楽章 Andante cantabile con espressione ヘ長調 3/4拍子 ソナタ形式。
ゆったりとしたアルペッジョで曲が始まり、表記通り表情豊かに優しく愛らしい音楽が進行する。しかし展開部は両端楽章の悲劇性を意識してか、それに比肩する激情的な音楽となっている。

第3楽章 Presto イ短調 2/4拍子 ロンド形式。
無慈悲なまでにとても速く曲が進行する。中間に、同主調であるイ長調の天国的な部分を持っている。

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