モーツァルト:幻想曲 Fantasia ハ短調 K. 475

ピアノ(Bösendorfer ): ヴァレンティーナ・リシッツァ Valentina Lisitsa
ベートーヴェン・ハウス Beethoven-Haus in Bonn , September 8th 2011

 

Ⅰ Adagio ハ短調 ~ ニ長調
Ⅱ Allegro 転調部
Ⅲ Andantino 変ロ長調
Ⅳ Piu Allegro 転調部
Ⅴ Tempo primo ハ短調

幻想曲 ハ短調 K.475は、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが作曲したピアノのための幻想曲。

本作は1785年5月20日にウィーンで作曲された。1785年12月にピアノソナタ第14番 K.457と合わせて作品11として出版されており、これによりK.457はモーツァルトのピアノソナタの中でジャンル違いの作品とともに出版された唯一の作品となった。作品11の2曲はテレーゼ・フォン・トラットナーに献呈されている。

この作品はピアノソナタ第14番へのプロローグとすべく書かれている。形式的には各部分が接続されていくという形で一貫性を見せており、その方法論にはCPEバッハの幻想曲が参考にされた可能性もある。一方、和声的にはソナタ形式に用いられる因習的な推移を逸脱し、主調から離れて彷徨うように移り変わる。モーツァルトはこの曲において当時のピアノの音域を余すことなく活用し、その色彩豊かな効果を引き出している。

アルフレート・アインシュタインはモーツァルトの「最大限の想像力の自由さと大胆さ、極めて極端な発想の対比、この上なく抑圧から自由な抒情性の多様さ、そしてヴィルトゥオーゾ要素に耽りながらも、構造の論理性を保つ能力」に言及し、本作を高く評価している。

演奏時間 約12分半。

楽曲構成
本作にはアダージョ、アレグロ、アンダンティーノ、ピウ・アレグロの4つの速度が用いられており、速度の変更は新しい主題の導入のタイミングと一致する。まず、曲はアダージョで幕を開ける。

この上昇形のモチーフが転調しながら繰り返されていき、ニ長調にたどり着くと愛らしい旋律が奏される。フェルマータの付された休符で間を置いたのち、アレグロの楽想が導入される。
そのまま勢いを保ってカデンツァへとなだれ込む。落ち着きを取り戻してアンダンティーノ、3/4拍子となると、譜例3の主題が奏でられる。

これに続くのはピウ・アレグロの楽想で、右手が奏する急速なアルベルティ・バスの音型に乗って移り変わっていく。やがて冒頭の速度に戻って譜例1が再現され、最後は急速に上昇するスケールで締めくくられる。

Wikipedia

幻想曲とは楽曲の名称の一つ。その様相はバロック時代以前と以後で一変する。
初期バロック時代以前に作曲された幻想曲=ファンタジア(Fantasia)は模倣様式による器楽曲形式の一つ。フーガと同様に多声部のための作品で、曲の冒頭で一つの声部に示された主題が次々と他の声部に模倣される。複数の主題を持つものも多い。リチェルカーレやカンツォーナなど他の模倣楽曲と明確な区別は無かった。ルネサンス時代に多く作品が見られるが、フーガの確立とともにファンタジアの名称は用いられなくなった。
後期バロック時代及びそれ以降の幻想曲は、形式が自由ではっきりと定まっていない楽曲であり、トッカータなどと同様に即興的性格をもつ作品を指した。ロマン派からは性格的小品から実質的なソナタである大規模な作品まで多様な曲が作曲された。

幻想曲

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