ハイドン:交響曲 第94番 第2楽章「驚愕」"Surprise"

指揮: ユーリー・テミルカーノフ Yuri Temirkanov
サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団 Saint Petersburg Philharmonic Orchestra

交響曲第94番 ト長調 Hob. I:94 は、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンが作曲した交響曲。イギリス訪問時のロンドンで作曲された、いわゆる『ロンドン交響曲』のうちの1曲であり、『驚愕』(または『びっくり』、英: The Surprise, 独: Mit dem Paukenschlag)の愛称で知られている。

ハイドンが長年楽長として仕えてきたエステルハージ侯の死去に伴って、同候家を去ることになってから2度にわたって経験したロンドン旅行の1回目の滞在期間中にあたる1791年に作曲されている。前記「2度にわたるロンドン滞在」で書き上げた『ロンドン交響曲』(ザロモン・セット)のうちの1曲に数えられると共に、ハイドンが遺した全作品の中でも最も有名な作品の一つにも数えられる。

愛称の由来
当楽曲に付与されている『驚愕』という愛称は、第2楽章冒頭の主題が最弱音にて2度繰り返し演奏された後の16小節目に於いてティンパニを伴ったトゥッティで不意打ちを食らわせるが如くに強く演奏するところから名付けられたもので、作曲者自身が命名したのでは無く、初演から間もなくして初演地の地元・ロンドンで発行された新聞紙上に掲載された演奏評に由来する。

こうした作曲の仕方を採った背景として、ハイドン自身が1度目のロンドン滞在中に目の当たりにした聴衆のマナーの悪さがあったとされている。当時、聴衆の中に居眠りをする者が少なからず存在していた。このことに癪に障る思いを抱いていたハイドンは、持ち前のユーモアさなどを活かし、当楽曲の作曲を通じて聴衆をたたき起こそうと行動を起こしたのである。そして実際の演奏の場で、前記第2楽章の強奏箇所のところでハイドンはティンパニ奏者に対し力一杯叩くよう指示、果たして狙い通りに聴衆がビックリして飛び上がったという。

もっとも、このことに関しては、音楽ジャーナリストの飯尾洋一が、主題を最弱音で一通り演奏した後に唐突な強奏をすることで驚かせるという趣向自体は使い古されたジョークであり、むしろ最弱音で演奏される主題こそが、茶目っ気がそのまま音になって表現されているかのようで可笑しい、という考え方を示している。
なお、愛称の『驚愕』自体に関して、英語表記では「The Surprise」と表される一方、ドイツ語表記では「Mit dem Paukenschlag」と表される。直訳すると「ティンパニの打奏を伴った」という意味になる。

第2楽章 アンダンテ Andante ハ長調、4分の2拍子、変奏曲形式。
主題と4つの変奏からなる。有名な主要主題が Music dynamic pianissimo.svg で反復されると、突如 Music dynamic fortissimo.svg による全合奏で「驚愕音」が鳴らされる。第2変奏はハ短調で、後半は Music dynamic forte.svg で劇的に進行する。第3変奏はオーボエやフルートの木管がメインになる。第4変奏ではクライマックスが築かれ、コーダではオーボエとファゴットが主題を奏でて静かに曲が終わる。

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