ハイドン:交響曲 第45番 嬰ヘ短調 「告別」 "Farewell" Symphony  German: Abschieds-Symphonie

指揮: アダム・フィッシャー Adam Fischer
デンマーク放送管弦楽団 DR UnderholdningsOrkestret

 
『交響曲第45番』は、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンが作曲した交響曲の1つ。成立年代は諸説あって確定していないが、1772年ごろに完成された。いわゆる「シュトゥルム・ウント・ドラング期」の交響曲の中ではよく知られている作品の1つで、「告別(Abschiedssinfonie)」という俗称で有名。定式通りに4つの楽章で作曲されている。
 
第1楽章 Allegro assai
第1楽章は、当時としては異例な嬰ヘ短調を用いて、切迫した状況が表現されている。この始まり方は、シュトゥルム・ウント・ドラング期のハイドンには典型的な手法によっており、第1ヴァイオリンによる下降和弦が、第2ヴァイオリンによるシンコペーションや、管楽器の和音のタイに伴奏されている。おおむねソナタ形式として説明することができるが、多くの点で標準的なソナタ形式とは違っている。たとえば再現部の寸前で、新たな素材が導入され、さしずめこれが、通常のソナタ形式の第2主題のような役割を果たしている。
 
第2楽章 Adagio
緩やかな第2楽章はイ長調、やはりソナタ形式による。弱音器をつけたヴァイオリンが奏でるくつろいだ旋律によって始まるが、「しゃっくり」のような動機の反復が目立っている。雰囲気は、長調と短調との交替によって、だんだんと厳粛に、瞑想的になっていき、シューベルトの後期作品に数多く見られるパッセージを連想させる。その後に、小節線をまたがって上昇を続ける一連の不協和音が続く。これは再現部において、ハイドンとしては異例の長さの楽段に発展する。
第3楽章 Menuetto, Allegretto 
第3楽章のメヌエットは、嬰ヘ長調による。その主な特色は、各部分の結びのカデンツは、第3拍にあるためきわめて弱く、不満足な感じをもたらしている。
 
第4楽章 Finale, Presto-Adagio
終楽章は、いかにもハイドンらしく、急速なテンポのフィナーレとして始まる。嬰ヘ短調でソナタ形式による。第1ヴァイオリンにバリオラージュ奏法が利用されると、一挙にリズムが激しさを増す。ついに再現部の終わりにたどり着くと、いかにも交響曲そのものが終わったかのように鳴り響くが、突然に属和音が割って入る。
その後に来るのは、実質的に第2の緩徐楽章というべき部分である。これは古典派の交響曲ではきわめて異例のことであり、おそらくエステルハージ侯にも、非常に耳新しく響いたに違いない。この部分は3/8拍子によって書かれ、イ長調から嬰ヘ長調に転調する間に、演奏者が持ち場を離れていくのである。わざと尻すぼみのように作曲された終結部は、ミュートをつけたきわめて柔らかなピアニッシモによって演奏される。
このアダージョの部分は、ちょっとしたシアター・ピースであるのだが、録音された演奏の聴き手にはなかなか伝わりにくい。全ての13人の演奏家は、退席する直前に短いソロのパッセージが与えられているが、それが目立たないパートもある。退席の順序は次のとおり。第1オーボエと第2ホルン、ファゴット、第2オーボエと第1ホルン、コントラバス、チェロ、第二ヴァイオリン、ヴィオラ。首席ヴァイオリニストともうひとりの第一ヴァイオリンは作品が終わるまで席に残っている。このことから、演奏を13人以上にしたり指揮者を入れたりするべきでは無いことが示唆されている。

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