ハイドン:弦楽四重奏曲 第77番 ハ長調「皇帝」"Kaiser Quartett" 作品76-3

ザグレブ弦楽四重奏団 Zagreb String Quartet

弦楽四重奏曲第77番ハ長調「皇帝」は、オーストリアの作曲家、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンが作曲した弦楽四重奏曲である。「皇帝」という副題は第2楽章が「オーストリア国家及び皇帝を賛える歌」の変奏曲であることに由来する 。
 
第1楽章 Allegro. GEFDCという音型ではじまるが、これは、Gott erhalte Franz den Kaiserの頭文字となっている。
 
第2楽章 Poco Adagio. Cantabile ハイドンが作曲したオーストリアの祝歌による変奏曲である。現在この楽章の主題はドイツ国歌(ドイツの歌)となっている。
第1変奏:第2ヴァイオリンが主題を奏し、第1ヴァイオリンが16分音符によるオブリガートを付す。
第2変奏:チェロが主題を奏す。
第3変奏:ヴィオラが主題を奏す。
第4変奏:再び第1ヴァイオリンが主題を奏し楽章を閉じる。
 
第3楽章 Menuetto メヌエットである。
 
第4楽章 Finale. Presto ハ短調の動機で始まり、ハ長調のコーダで閉じられる。
作曲の経緯
イギリスに滞在中、ハイドンはイギリス人たちが、イギリスの国歌を口ずさみ、国家への忠誠を心に深く抱く様を目撃し、感銘を受ける。時同じくして、オーストリアはナポレオン・ボナパルト率いるフランス軍の侵略に脅かされていた。ハイドンは、故郷の存続を他国から救い、人々にオーストリア人としての誇りを取り戻させ、励ますために「オーストリア国歌」制定を提唱。作曲に取りかかる。このとき作曲した旋律を、彼の77番目の弦楽四重奏曲――後にハイドンの最高傑作と謳われ、「皇帝」の名を与えられることとなる弦楽四重奏曲――に組み入れ、変奏曲として第2楽章にする。
 
ハイドン自身、この曲の作曲に大いなる意義と自信を抱いていて、また完成に大いなる満足感と達成感を持っていた。晩年、体中を病に蝕まれ、体力の衰弱とありあまる創作意欲の狭間で苦悩していたハイドンは、この曲をピアノで奏でることでのみ、苦しみから逃れ、安らぐことができたのだという。
また、ナポレオン軍がオーストリアに侵攻し、いよいよウィーンが陥落されるという日にも、ハイドンはこの曲を力強く弾き続け、国民に訴えかけていたという。演奏はオーストリア征服の日、すなわちハイドンが息を引き取る前の日にまで及んだ。

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