ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61

指揮: ジャン・フルネ Jean Fournet (1961年 - 1978年 当楽団の常任指揮者)
オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団 Netherlands Radio Philharmonic
ヴァイオリン: ジノ・フランチェスカッティ Zino Francescatti
13/05/1973

ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61は、1806年に作曲されたヴァイオリンと管弦楽のための協奏曲。ベートーヴェン中期を代表する傑作の1つ。彼はヴァイオリンと管弦楽のための作品を他に3曲書いている。2曲のロマンス(作品40および作品50)と第1楽章の途中で未完に終わった協奏曲(WoO 5)がそれにあたり、完成した「協奏曲」は本作品1作しかない。しかしその完成度はすばらしく、『ヴァイオリン協奏曲の王者』とも、あるいはメンデルスゾーンの作品64、ブラームスの作品77の作品とともに『三大ヴァイオリン協奏曲』とも称される

第1楽章 アレグロ・マ・ノン・トロッポ ニ長調 ソナタ形式。
曲はティンパニが微かに刻むリズムで始まる。木管楽器が柔和な第1主題を歌う。続いてシレジア民謡による第2主題が同様にして演奏される。やがて両者を融合したような結尾主題が弦楽器に出てオーケストラ提示部を締めくくる。ついで独奏楽器が提示部を開始し、第1主題を奏でる。第2主題は独奏ヴァイオリンのトリルの上で再び木管楽器が演奏する。独奏提示部の終わりで独奏ヴァイオリンは華やかな技巧を披露する。展開部はオーケストラの合奏で始まり独奏ヴァイオリンも加わって入念な主題操作が行われる。再現部もやはりオーケストラが第1主題を合奏しはじめ、独奏ヴァイオリンがこれに加わる形で始まる。第1主題、第2主題、結尾主題と型通りに再現され、カデンツァとなるが、後述の通り、ベートーヴェンはこのカデンツァを作曲していない。カデンツァの後、独奏ヴァイオリンは第2主題を静かに奏でるが、徐々に力を増し、最後は強奏の主和音で力強く終わる。
第2楽章 ラルゲット ト長調 変奏曲(あるいは変奏曲の主部を持つ三部形式とも解釈できる)。
安らかで穏健な主題が弱音器付きの弦楽器により提示される。第1変奏から第3変奏まで独奏ヴァイオリンは主題を担当せず装飾的に動き回る。第2変奏ではファゴットが主題を担当しているのも珍しい。ついで独奏ヴァイオリンが新しい旋律を歌い始めて中間部に入る。この旋律はG線とD線のみで演奏するよう指定されている。これが華やかに変奏されるうち、主部の主題が変形されて中間部の主題と絡む。弦楽器が重厚な響きを出すとここから独奏ヴァイオリンの短いカデンツァとなり(このカデンツァはベートーヴェンの手によるもの)そのまま第3楽章に入る。
第3楽章 ロンド アレグロ ニ長調 ロンド形式。
独奏ヴァイオリンがロンド主題を提示して始まり、オーケストラがこれを繰り返す。次に独奏ヴァイオリンが朗らかな第1副主題を演奏する。この後独奏ヴァイオリンは細かい経過句を経てロンド主題を再現する。オーケストラがロンド主題を繰り返すと独奏ヴァイオリンがこれを変奏し始め、やがて感傷的な第2副主題となる。これをファゴットが引き取り、独奏ヴァイオリンは装飾音から次いでロンド主題を再帰させる。オーケストラの繰り返し、独奏ヴァイオリンによる第1副主題とロンドの型通りに曲は進行し、最後のカデンツァがロンド主題の再現もかねて、輝かしいクライマックスを築いて全曲の幕を閉じる。

ベートーベン:ヴァイオリン協奏曲

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