ベートーヴェン: 交響曲 第7番 イ長調 作品92

指揮: ヴォルフガング・サヴァリッシュ Wolfgang Sawallisch
NHK交響楽団 NHK Symphony Orchestra
1988年

交響曲第7番イ長調作品92はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンが作曲した7番目の交響曲。明るく軽快な曲想から広く支持され、現在でも演奏される機会が多い。

ベートーヴェンの交響曲中でも最もリズミカルな作品である。第5番や第6番におけるさまざまな新たな試みの後に、再び正統的な手法による交響曲に回帰した作品である。
音楽家からの評価はさまざまである。ワーグナーは各楽章におけるリズム動機の活用を指して、この曲を舞踏の聖化と絶賛している。その一方で、ウェーバーは「ベートーヴェンは今や精神病院行きだ」との言葉を残し、ワインガルトナーは「他のいかなる曲よりも精神的疲労を生じさせる」と語っている。
作曲は1811年から1812年にかけて行われ、初演は、1813年12月8日、ウィーンにて、ベートーヴェン自身の指揮で行われた。同じ演奏会で初演された『ウェリントンの勝利』の方が聴衆の受けはよかったとされるが、それでも初演は成功であり、第2楽章はアンコールを求められた。

演奏時間は、伝統的な演奏では第1・3・4楽章のすべての繰り返しを含むと約42分である。
ただし、すべての繰り返しが行われる演奏は少なく、その結果40分弱の時間で演奏されることが多かった。カラヤン/ベルリン・フィルなどでは35分を切る時間で演奏されている。近年はベートーヴェンのメトロノーム指示と作曲当時の演奏習慣を尊重する傾向が強まり、全て繰り返しを行って40分を切る演奏も増えている。

曲の構成は、古典的な交響曲の形式に従うが、緩徐楽章(第2楽章)では通例「遅く」などと指定されるところを「やや速く」と指定されている。また、全曲を通してリズムが支配的であり、快い速度で全曲を駆け抜けていく。

第1楽章 ポコ・ソステヌート - ヴィヴァーチェ、イ長調 4分の4拍子 - 8分の6拍子 序奏付きソナタ形式(提示部反復指定あり)。
トゥッティで四分音符が強く奏され、オーボエがソロで奏でる。そして、長大な上昇長音階の輝ける序奏の後、付点音符による軽快なリズムの音楽が始まる。第1主題はフルートの楽しげなソロによって提示される。そこから付点音符の動機が全曲を通して反復されるため第2主題との対比は少ない。シチリアーノが主題部展開部再現部すべてを支配しておりワーグナーの評が指示する通りである。コーダでは低弦によるオスティナートが用いられている。

第2楽章 アレグレット、イ短調 4分の2拍子 複合三部形式。
初演時に聴衆から特に支持された楽章。シューマンはこの主題を基に変奏曲を遺しているし、ワーグナーはこの楽章をさして「不滅のアレグレット」と呼んでいる。複合三部形式の主部は変奏曲の形式であり、かたくなに同音が反復されつづける静的な旋律でありながらも、和声的には豊かに彩られている。最初の三小節でホルンと木管が奏でる印象的な和音のあとに、弦楽器で第1主題が奏でられる。ヴィヴァーチェ、プレスト、アレグロが立て続けに演奏されるこの曲の中では、「アレグレット(少し速く)」は、比較的遅い速度設定である。ベートーヴェンは、ゆっくり、しかし普通のアンダンテやアダージョよりは速くしてほしい、という意図で、このように設定したようである。

第3楽章 スケルツォとトリオ。プレスト、ヘ長調 4分の3拍子 三部形式(最初のスケルツォ部分のみ反復指定あり)。
トリオはニ長調。形式的には三部形式であるが、トリオは2回現れ、ABABAの型になっている。コーダでは第9番の第二楽章と同様にトリオが短く回想される。

第4楽章 アレグロ・コン・ブリオ、イ長調 4分の2拍子 ソナタ形式(提示部反復指定あり)。
  熱狂的なフィナーレ。第2楽章同様、同一リズムが執拗に反復され、アウフタクト(弱拍)である2拍目にアクセントが置かれている。第1主題は後年の資料研究からアイルランドの民謡「ノラ・クレイナ」の旋律からとられたとされている。第1楽章同様、コーダでは低弦によるオスティナートが演奏される。

音楽の森 ベートーベン:交響曲 第7番

inserted by FC2 system