ベートーヴェン: 交響曲 第5番 「運命」冒頭 聴き比べ

1. クライバー Carlos Kleiber
2. イッセルシュテット Hans Schmidt-Isserstedt
3. ヴァント Günter Wand
4. トスカニーニ Arturo Toscanini
5. ベーム Karl Böhm
6. カラヤン Herbert von Karajan
7. ガーディナー John Eliot Gardiner
8. フルトヴェングラー Wilhelm Furtwängler
9. グールド(ピアノ) Glenn Herbert Gould
本交響曲は、日本では「運命」または「運命交響曲」という名称で知られているが、これは通称であって正式な題名ではない。この通称は、ベートーヴェンの弟子アントン・シントラーの「冒頭の4つの音は何を示すのか」という質問に対し「このように運命は扉をたたく」とベートーヴェンが答えたことに由来するとされる。しかしこのシントラーの発言は、必ずしもこの作品の本質を表しておらず、現在では「運命」という名称で呼ぶことは適当でないと考えられている。
 
交響曲の定型通り、4つの楽章で構成されている。演奏時間は約35分。「暗から明へ」という構成をとり、激しい葛藤を描いた第1楽章から瞑想的な第2楽章、第3楽章の不気味なスケルツォを経て、第4楽章で歓喜が解き放たれるような曲想上の構成をとっている。
第1楽章 Allegro con brio ハ短調 2/4拍子 第1楽章冒頭譜例ソナタ形式(提示部反復指定あり)。
「ダダダダーン」という有名な動機に始まる。これは全曲を通して用いられるきわめて重要な動機である。特に第1楽章は楽章全体がこの「ダダダダーン」という動機に支配されており、その中でもティンパニのパートはほとんどこのリズムで構成されている。冒頭の動機は演奏家の解釈が非常に分かれる部分である。ゆっくりと強調しながら演奏する指揮者もいれば、Allegro con brio(速く活発に)という言葉に従ってこの楽章の基本となるテンポとほぼ同じ速さで演奏する指揮者もいる。往年の大指揮者には前者の立場が多く、この演奏スタイルがいわゆる「ダダダダーン」のイメージを形成したと考えられる。しかし、近年では作曲当時の演奏スタイルを尊重する立場から後者がより好まれる傾向にある。ハインリヒ・シェンカーによると、この8音は全体でひとつの属和音のような機能を果たしており、最後のD音に最も重点があるとされている。

音楽の森 ベートーベン:交響曲 第5番

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