ベートーヴェン:交響曲 第1番 ハ長調 作品21

指揮: グスタフ・クーン Gustav Kuhn
ハイドン管弦楽団 Haydn Orchestra

ベートーヴェンの交響曲第1番ハ長調作品21は、ベートーヴェンが1800年に完成させた自身1曲目の交響曲である。ピアノソナタ第8番「悲愴」や七重奏曲、6つの弦楽四重奏曲などともに、ベートーヴェンの初期の代表作として知られている。
 
ベートーヴェンの交響曲のうち、第1番、第2番はベートーヴェンの初期の作品に含まれる。ベートーヴェンの初期作品は、ハイドン、モーツァルトといった古典派の作曲家の作曲技法を踏襲していた時期の作品であり、随所にベートーヴェン独自の意欲的な試みも認められるものの、中期から後期作品のようなベートーヴェンの強い個性はまだ見出すことは出来ない。中期、後期の大作群と比べると相対的に人気はないが、古典派の交響曲としては十分な完成度を誇っている。
 
ベートーヴェンは当初ピアニストとして生計を立てていたこともあり、初期の作品はピアノソナタ、ピアノ三重奏曲、ピアノ協奏曲など、主にピアノに関する作品が中心を占めている。一方で、この時期には弦楽四重奏曲、七重奏曲などの作曲も経験しており、これによってベートーヴェンは合奏曲の書き方も学ぶことになる。
これらの作曲を経験することによって、ハイドン、モーツァルトら古典派の作曲技法を吸収し、自らの技術として身につけている。
交響曲第1番は、ここで学んだ技術の総集編として、1799年から1800年に作曲されたものと考えられている。
この作品はゴットフリート・ファン・スヴィーテンに献呈された。
 
1800年4月2日、ウィーンのブルク劇場にて、ベートーヴェン自身の指揮により初演。 ブルク劇場での初演はプログラムの最後に組み込まれた。
曲の構成 演奏時間は約30分。
第1楽章 Adagio molto - Allegro con brio ハ長調 4/4拍子 - 2/2拍子
序奏つきのソナタ形式(提示部反復指定あり)。序奏に独創性が認められる。作品の冒頭の和音はその調性における主和音であるべきだが、ここでは下属調の属七の和音が使用されている。その後もなかなかハ長調は確立されず、調性が不安定である。このような処理は、通常の古典派の感覚を逸脱するものである。序奏に続く第一主題はこれと対比をなし、モーツァルトの交響曲第41番の第1楽章にも似た力強い旋律は、ハ長調の調性を強く確立させている。この第1主題(C-G-H-C)の上昇4度の動機は全楽章に渡って用いられており、統一感を与えている。
 
第2楽章 Andante cantabile con moto ヘ長調 3/8拍子
ソナタ形式の緩徐楽章(提示部反復指定あり)。冒頭はフーガ風に開始される。
 
第3楽章 Menuetto:Allegro molto e vivace ハ長調 3/4拍子
複合三部形式。メヌエットと題されているが、実質的にはスケルツォであり、早くも後の大作に見出されるような革新性を示している。
 
第4楽章 Adagio - Allegro molto e vivace ハ長調 2/4拍子
序奏付きソナタ形式(提示部反復指定あり)。序奏のヴァイオリンの旋律が秀逸といわれる。G音から始まる上行フレーズが繰り返し提示され、それはだんだん長くされ、最後にはF音に達し属七の和音の響きが形作られ、そこでフェルマータとなる。その次には1オクターブ上のG音まで達し、この1オクターブの上行音形とそれに続く旋律が第1主題としての役割を果たすことになる。このような、断片的な動機が発展して主題が生まれるという処理は、後の交響曲第5番や交響曲第9番の第1楽章冒頭でも見られる。序奏の後の主部はロンド風で、ハイドン的な楽しさに満ちている。第1主題は、第1楽章の副主題(C-E-G-F-E-D-C)の完全な逆行である。

音楽の森 ベートーベン:交響曲 第1番

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