ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第17番 ニ短調 作品31-2 「テンペスト」"Tempest"

ピアノ演奏: ダニエル・バレンボイム Daniel Barenboim

ピアノソナタ第17番 ニ短調 作品31-2は、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンが作曲したピアノソナタ。『テンペスト』の通称で知られる。
 
カール・ツェルニーによると、ベートーヴェンは作品31を作曲している頃にヴァイオリニストで友人のヴェンゼル・クルンプホルツに対し「私は今までの作品に満足していない。今後は新しい道を進むつもりだ。」と述べたという。作曲時期は難聴への苦悶からハイリゲンシュタットの遺書がしたためられた時期にも一致しており、作品31の中でも特に革新的で劇的な本作にはそうしたベートーヴェンの決意を感じることができる。また、3つの楽章の全てがソナタ形式で作曲されている点もこの作品のユニークな点のひとつである。
 
『テンペスト』という通称は、弟子のアントン・シンドラーがこの曲と第23番(熱情)の解釈について尋ねたとき、ベートーヴェンが「シェイクスピアの『テンペスト』を読め」と言ったとされることに由来している。しかし、ドナルド・フランシス・トーヴィーはこの曲の中に戯曲の登場人物を見出そうとする試みは「英雄やハ短調交響曲(運命)が演奏されているときに、『紅はこべ』の功績のみに目を向けているようなものだ」と記している。
第1楽章 Largo-Allegroニ短調。ソナタ形式。
ラルゴ-アレグロを主体としながらもテンポ表示は頻繁に変わる。全体は3つの部分からなる。再現部の前の朗詠調のレシタチーヴォ、刻々と変わる発想記号などは朗読劇を聞いているようで、中期作曲者の劇的な作風の典型である。終結も陰鬱な低音が静かに現れるだけである。演者が(幕が下り)静かに立ち去る様子を模写しているように映る。
 
第2楽章 Adagio変ロ長調。展開部を欠くソナタ形式。
第1楽章との間にも緊密な関連がある。
 
第3楽章 Allegrettoニ短調。ソナタ形式。
単純な音型を休みなく繰り返すが、単に激しい速さで演奏するものでないだけにAllegrettoの記号が不気味さを演出している。もとは馬車の走行から採譜したものといわれている。

ピアノソナタ第17番「テンペスト」 (ベートーヴェン)

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