ベートーヴェン:ピアノソナタ 第17番 ニ短調 作品31-2「テンペスト」"Tempest" 第2楽章 Adagio

ピアノ: ヴィルヘルム・バックハウス Wilhelm Backhaus 1952年録音

『テンペスト』という通称は、弟子のアントン・シンドラーがこの曲と第23番(熱情)の解釈について尋ねたとき、ベートーヴェンが「シェイクスピアの『テンペスト』を読め」と言ったとされることに由来している。しかし、ドナルド・フランシス・トーヴィーはこの曲の中に戯曲の登場人物を見出そうとする試みは「英雄やハ短調交響曲(運命)が演奏されているときに、『紅はこべ』の功績のみに目を向けているようなものだ」と記している。

第2楽章 Adagio 3/4拍子 変ロ長調 展開部を欠くソナタ形式
第1楽章と同じくアルペッジョで幕を開け、遠く離れた2つの声部が対話風に応答し合う第1主題が現れる。
ティンパニのように響く低音の音型が高音部にも明滅し、その間でコラールが響く経過楽節がくる。第2主題はドルチェで歌われるヘ長調の美しい歌である。
展開部は置かれず、しばしティンパニ風の音型を聴くとただちに再現部が始まる。再現された第1主題は形を変えており、音域の広いアルペッジョの伴奏に彩られる。経過部、変ロ長調の第2主題と続き、第1主題によるコーダの後にしめやかに終わりを迎える。
inserted by FC2 system