ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第14番 嬰ハ短調 作品27 「月光ソナタ」 "Moonlight Sonata"

ピアノ演奏:クラウディオ・アラウ Claudio Arrau Leon

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンのピアノソナタ第14番嬰ハ短調作品27の2『幻想曲風に』 (Klaviersonate Nr. 14 op. 27 Nr. 2 cis-moll "Quasi una Fantasia")は、ベートーヴェンが16番目に作曲した番号付きピアノソナタである。一般には『月光ソナタ』として知られており、ベートーヴェンの三大ピアノソナタのひとつに含まれる。
ベートーヴェンのピアノソナタでも人気がある曲のひとつであり、8番『悲愴』、23番『熱情』と並んで3大ピアノソナタと呼ばれることもある。
この曲は前作のピアノソナタ第13番と組になってひとつの作品(作品27)として発表されており、両者とも「幻想曲風ソナタ」という題名が書かれている。ただし、本作の通称「月光」があまりにも有名になったため、本作を「幻想曲風ソナタ」と呼ぶことはほとんどない。
「月光」という標題は作曲者の意図するところではなく、ベートーヴェンの死後、1832年にルートヴィヒ・レルシュタープが第1楽章について「ルツェルン湖の月光の波に揺らぐ小舟のよう」とコメントしたことに由来するが、月の光のような印象があるのは第1楽章のみで、「月光」という語には単にこの曲の通称という以上の意味はない。

第1楽章に緩徐楽章を配置するという、変わった構成をしている。このため「幻想曲風」というタイトルを付けたのではないかと思われる。また、4楽章ソナタの標準的な構成である「アレグロ、緩徐楽章、舞曲、終曲」という構成から第1楽章に相当するアレグロ楽章を省略したものであるとする意見もある。
ストコフスキー編曲による管弦楽バージョンもある。
曲全体は、完成度が非常に高く、楽章ごとにテンポが速くなるという序破急的な展開となっている。

第1楽章 Adagio sostenuto (attacca) 嬰ハ短調。複合三部形式。「月光の曲」として知られ、ピアノ音楽の中でも有名な曲のひとつである。右手の三連符と左手の重厚なオクターヴが中心。難曲のひとつであろう。

第2楽章 Allegretto 変ニ長調。複合三部形式。軽快なスケルツォ。AllegroでなくAllegretto楽章であり、軽快さよりも柔和な浮揚感をもって演奏される。

第3楽章 Presto agitato 嬰ハ短調。ソナタ形式。無窮動的な終曲。第1楽章、第2楽章と比べテクニック面においては難度が高い。最も重点が置かれる楽章。分散和音が上昇していく主題は作曲者のイディオムである。第二主題には、短調のソナタ形式としては珍しく、属調である嬰ト短調が用いられている(通例は平行調など、長調を用いる)。再現部の後には、協奏曲のカデンツァ風の長大な終結部が置かれている。最後に現れるオクターヴはピアノ協奏曲の第1楽章のそれとほぼ同一であり、協奏曲の持つ名人芸効果をもたらしている。

ピアノソナタ第14番 (ベートーヴェン)

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