ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ 第12番「葬送」変イ長調 作品26

ピアノ演奏: エミール・ギレリス Emil Grigoryevich Gilels

 

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンのピアノソナタ第12番変イ長調作品26は彼のピアノソナタの中でも、初期から中期への転換点にあたると見られている重要な作品である。第三楽章に置かれた『ある英雄の死を悼む葬送行進曲』と副題のつけられたマエストーソ・アンダンテはこの作品中の圧巻であり、ここから《葬送》の通称で親しまれている。またこの楽章は単独で管弦楽や吹奏楽などに編曲され、要人の葬儀で演奏される機会も多い。
作曲時期:1800年 - 1801年ごろと見られる。

・第1楽章 Andante con Variazioni 変イ長調、変奏曲。主題と五つの変奏。
・第2楽章 Scherzo. Molto Allegro 変イ長調。
複合三部形式で、ベートーヴェンのピアノソナタの第二楽章ではよく見られるスタッカートを多用した軽妙なスケルツォである。きわめて速く演奏される。
・第3楽章 Maestoso Andante (Marcia funebre sulla morte d'un Eroe) 変イ短調、複合三部形式。『ある英雄の死を悼む葬送行進曲』との副題がつけられている。1815年春、管弦楽用に編曲し、劇音楽『レオノーレ・プロハスカ』(WoO96)の第4曲に転用した。
・第4楽章 Allegro 変イ長調、ロンド形式。対位法を駆使して、機能的に構成されている。

ピアノソナタではあるが、ソナタ形式の楽章をひとつも含まない組曲風の構成となっていて、従来のソナタを大きく脱却している。4つの楽章は非常にバリエーションに富んでおり、とくに第一楽章の変奏曲や最終楽章の対位法はベートーヴェンの最後期のピアノソナタで再び深く追求される題材でもあり、彼がハイドンやモーツァルトらの影響から抜け出して独自性を獲得するに至る転換点と見ることができる。
ショパンはベートーヴェンの曲中でもこの曲だけをとくに好んでいたらしく、同じく三楽章に有名な葬送行進曲を持つピアノソナタ第2番は明確にベートーヴェンのものを意識して作られている。

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