ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第5番 作品73 「皇帝」"Emperor"

指揮 & ピアノ :ルドルフ・ブッフビンダー Rudolf Buchbinder
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 Wiener Philharmoniker

ピアノ協奏曲第5番変ホ長調作品73は、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンが遺したピアノ協奏曲の一つ。『皇帝』の通称で知られている。

いわゆる「傑作の森」と評される時期に生み出された作品の一つであり、ナポレオン率いるフランス軍によってウィーンが占領される前後に手がけられている。ベートーヴェンが生涯に完成させたオリジナルのピアノ協奏曲全5曲の中では一番最後となる作品であり、かつ初演に於いて他のピアニストに独奏ピアノを委ねた唯一の作品でもある。
全3楽章構成となっており、第2楽章と第3楽章は続けて演奏される。演奏時間は39~40分で、ベートーヴェンのピアノ協奏曲の中では最大規模を誇る。

第1楽章 Allegro 変ホ長調 4/4拍子独奏協奏曲式ソナタ形式。
慣例に反して、いきなりピアノの独奏で始まるがこの部分は序奏に相当する。提示部は伝統的な独奏協奏曲の様式に従い、まずオーケストラで提示してからピアノが加わる。第2主題は最初短調で示されてから本来の長調に移行するが、第1提示部(オーケストラ提示部)では同主短調の変ホ短調で示されてから本来の変ホ長調へ、第2提示部(独奏提示部)では遠隔調のロ短調で示されてから本来の属調(変ロ長調)へ移行する。コデッタは第1主題を全合奏で力強く奏するもので、華麗に提示部を締めくくる。展開部は木管が第1主題を奏して始まり、豪快に協奏しながら第1主題を中心に展開してゆく。再現部は序奏から再現されるが、主題の再現自体は型どおりのものになっている。コーダに入る所ではベートーヴェン自身により、カデンツァは不要である旨の指示がある。

第2楽章 Adagio un poco mosso ロ長調 4/4拍子変奏曲形式(ヘンレ版では2分の2拍子)。
穏やかな旋律が広がる。全体は3部からなっており、第3部は第1部の変奏である。第2部を第1部の変奏と解釈すれば第2部が第1変奏、第3部が第2変奏の変奏曲形式であり、そう解釈しなければ第2部を中間部とした複合三部形式である。楽章の最後で次の楽章の主題を変ホ長調で予告し、そのまま続けて終楽章になだれ込む。

第3楽章 Rondo Allegro - Piu allgero 変ホ長調 6/8拍子ソナタ形式。
同じ主題が何度も弾かれ、ロンド形式の風体を示しているのでロンドと呼んだものと考えられる。しかし形式としては完全にソナタ形式の要件を備えているので、ロンド風ソナタ形式と言った方がいいだろう。快活なリズムで始まる。再現部の前で第2楽章の終わり(すなわち第3楽章の提示部の前)の部分を回想している。終わり近くでティンパニが同音で伴奏する中で、ピアノが静まっていく部分が印象的である。

ピアノ協奏曲第5番 (ベートーヴェン)

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