J.S.バッハ:3声のインベンション(シンフォニア) 第1番 BWV 787 ~ 第15番 BWV 801

チェンバロ:キアラ・マッシーニ Chiara Massini

インヴェンションとシンフォニア BWV 772-801(Inventionen und Sinfonien BWV 772-801)は、ヨハン・ゼバスティアン・バッハのクラヴィーアのための曲集。

ケーテン時代の1723年頃の作品であり、同年、バッハは聖トーマス教会音楽監督(トーマスカントル)に就任した。ライプツィヒ時代には教育目的のクラヴィーア曲が多数作曲された。

長男のために編まれた「ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハのためのクラヴィーア小曲集(Klavierbuchlein fur Wilhelm Friedemann Bach)」(1720年頃)の後半部に初稿がある。なお、同書の前半部には「平均律クラヴィーア曲集 第1巻」(1722年)の初稿が含まれる。初稿の曲名は「プレアンブルム」(Praeambulum, 32-46曲, 36-51頁)と「ファンタジア」(Fantasia, 49-62曲, 58-73頁, 72-73頁散逸)だった。

インヴェンションは2声部の、シンフォニアは3声部の、対位法的な書法による様々な性格の小曲である。シンフォニアは「3声のインヴェンション」と出版社によって呼ばれることもあったが、現在はほとんどの出版社によってインヴェンションとシンフォニアに戻されている。自筆譜原題は率直なる手引き (Auffrichtige Anleitung)である。:
率直なる手引き、これによってクラヴィーア愛好人士、ことに学習に意欲を燃やす人々が、(1)2声部をきれいに演奏することを学ぶばかりでなく、さらに上達した段階で、(2)3声部のオブリガート・パートの処理を正しく立派に行う明確な方法が示され、あわせて同時に良い着想を案出するのみでなく、それをりっぱに展開すること、しかしなによりもカンタービレの奏法を身に付けること、それに加えて作曲への強い興味と愛好を呼び覚ますことへの指針を掲げるものである。著作者ヨーハン・ゼバスティアン・バッハ、アンハルト=ケーテン侯宮廷楽長。 この通り、演奏だけでなく、作曲も視野に入れた優れた教育作品として、現在も高く評価されており、現代のピアノ学習者のための教材としても広く用いられている。また教育作品に留まらず、バッハの他のクラヴィーア楽曲と同様、多くのチェンバロ奏者やピアニストが演奏や録音を行なっている。

楽曲
他のバッハの曲集と同様、古くから多くの校訂版が出版されてきた。特にインヴェンションとシンフォニアは、学習者の需要があることから、原典版にはない表現記号を校訂者が補筆した「実用版」が多い。その解釈は極めて多様であり、このことは演奏を幾つか聞き比べすることでも実感できる。解釈や装飾音の選択等によっては、各曲の印象や難易度はかなり変化する。

シンフォニア Sinfonia

第1番 ハ長調 BWV 787 4分の4拍子。
伸びやかに上昇する音階主題。
第2番 ハ短調 BWV 788 8分の12拍子。
落ち着いた曲。音階が随所に登場し単調さを避けている。
第3番 ニ長調 BWV 789 4分の4拍子。
冒頭で下属調の第4音であるCが出てくるため、あたかもト長調であるかのような印象を受ける。平行3度の音階、複雑な左右の受け渡しが発生するストレッタなど、高度な技巧が要求される。
第4番 ニ短調 BWV 790 4分の4拍子。
16分音符のD-Cis-Dのあと4度下降、8分音符で6度上昇する動機が多く用いられる。
第5番 変ホ長調 BWV 791 4分の3拍子。
異稿(BWV 791a)がある。左手は一定の音型を繰り返す。
第6番 ホ長調 BWV 792 8分の9拍子。
管弦楽曲風。
第7番 ホ短調 BWV 793 4分の3拍子。
第8番 ヘ長調 BWV 794 4分の4拍子。
第9番 ヘ短調 BWV 795 4分の4拍子。
3声のフーガ。溜息の音型を含む第1主題、半音階下行のラメント・バス、16分音符の部分からなる3つの主題が同時に対位する三重対位法で書かれている。バッハの生前から評価が高かった。
第10番 ト長調 BWV 796 4分の3拍子。
第11番 ト短調 BWV 797 8分の3拍子。
分散和音の下降のあと8度跳躍する主題。
第12番 イ長調 BWV 798 4分の4拍子。
動機とバスを交互に分散した形の16分音符が多用される。
第13番 イ短調 BWV 799 8分の9拍子。
始まりは素朴だが、即興的に次々と新素材が導入され、終結部は壮大な多重フーガの観を呈する。
第14番 変ロ長調 BWV 800 4分の4拍子。
下降的主題を持つ。終曲直前の流れるような下降音階が印象的である。
第15番 ロ短調 BWV 801 16分の9拍子。
スラーとスタッカートの組み合わされたリズミカルな動機、H-Cis-D-Cis-Hの動機、32分音符のアルペッジョからなる。二段鍵盤のチェンバロを使うことを想定した箇所がみられる。

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