J.S.バッハ:2声のインベンション 第1番 BWV 772 ~ 第7番 BWV 778

チェンバロ:キアラ・マッシーニ Chiara Massini

インヴェンションとシンフォニア BWV 772-801(Inventionen und Sinfonien BWV 772-801)は、ヨハン・ゼバスティアン・バッハのクラヴィーアのための曲集。

ケーテン時代の1723年頃の作品であり、同年、バッハは聖トーマス教会音楽監督(トーマスカントル)に就任した。ライプツィヒ時代には教育目的のクラヴィーア曲が多数作曲された。

長男のために編まれた「ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハのためのクラヴィーア小曲集(Klavierbuchlein fur Wilhelm Friedemann Bach)」(1720年頃)の後半部に初稿がある。なお、同書の前半部には「平均律クラヴィーア曲集 第1巻」(1722年)の初稿が含まれる。初稿の曲名は「プレアンブルム」(Praeambulum, 32-46曲, 36-51頁)と「ファンタジア」(Fantasia, 49-62曲, 58-73頁, 72-73頁散逸)だった。

インヴェンションは2声部の、シンフォニアは3声部の、対位法的な書法による様々な性格の小曲である。シンフォニアは「3声のインヴェンション」と出版社によって呼ばれることもあったが、現在はほとんどの出版社によってインヴェンションとシンフォニアに戻されている。自筆譜原題は率直なる手引き (Auffrichtige Anleitung)である。:
率直なる手引き、これによってクラヴィーア愛好人士、ことに学習に意欲を燃やす人々が、(1)2声部をきれいに演奏することを学ぶばかりでなく、さらに上達した段階で、(2)3声部のオブリガート・パートの処理を正しく立派に行う明確な方法が示され、あわせて同時に良い着想を案出するのみでなく、それをりっぱに展開すること、しかしなによりもカンタービレの奏法を身に付けること、それに加えて作曲への強い興味と愛好を呼び覚ますことへの指針を掲げるものである。著作者ヨーハン・ゼバスティアン・バッハ、アンハルト=ケーテン侯宮廷楽長。 この通り、演奏だけでなく、作曲も視野に入れた優れた教育作品として、現在も高く評価されており、現代のピアノ学習者のための教材としても広く用いられている。また教育作品に留まらず、バッハの他のクラヴィーア楽曲と同様、多くのチェンバロ奏者やピアニストが演奏や録音を行なっている。

曲の配列について
曲集に採用されている15調は、4つ以内の調号で表記される18調から嬰ヘ短調(♯3)、嬰ハ短調(♯4)、変イ長調(♭4)の3調を除外したものである。当時は多くの調号を持つ調は頻繁に使われるものではなかったため、割愛したものと考えられる。ただし、バッハは同時期に全ての調を網羅した「平均律クラヴィーア曲集 第1巻」も編纂している。

楽曲
他のバッハの曲集と同様、古くから多くの校訂版が出版されてきた。特にインヴェンションとシンフォニアは、学習者の需要があることから、原典版にはない表現記号を校訂者が補筆した「実用版」が多い。その解釈は極めて多様であり、このことは演奏を幾つか聞き比べすることでも実感できる。解釈や装飾音の選択等によっては、各曲の印象や難易度はかなり変化する。

インヴェンション

第1番 ハ長調 BWV 772 4分の4拍子。
主題はC-D-E-F-D-E-Cの16分音符とG-C-H-Cの8分音符とからなる。主題のうち16分音符の後半(階段状に下がるF-D-E-Cの部分)をすべて3連符にした異稿(BWV 772a)が残っており、こちらをバッハの最終的な意図(改訂)として採用するシフのような演奏家もいる。新バッハ全集では一つの変奏例と位置づけている。
第2番 ハ短調 BWV 773 4分の4拍子。
8度(オクターブ)のカノン。後半は左手が先行する。冒頭の10小節と(2小節の間奏を挟み)後半の6小節目までは2小節遅れの厳格なカノン。主題には溜息の音型が含まれる。
第3番 ニ長調 BWV 774 8分の3拍子。
左手のオクターブの上に右手が優雅な主題を奏でる。
第4番 ニ短調 BWV 775 8分の3拍子。
上昇音階を中心にした主題。しばしば非常に速いテンポで演奏される。
第5番 変ホ長調 BWV 776 4分の4拍子。
二重対位法。
第6番 ホ長調 BWV 777 8分の3拍子。
シンコペーション(切分法)で書かれた曲。右手と左手の兼ね合いが妙味を出す。「ソナタ形式を彷彿させる二部形式」。繰り返し記号が2カ所に付いているため、他の作品よりも演奏時間が少し長くなる。
第7番 ホ短調 BWV 778 4分の4拍子。
左手の8分音符によるオクターブ下降が特徴。

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