J.S.バッハ: ソプラノ独唱世俗カンタータ(結婚カンタータ) BVW 202 Nr. 1「しりぞけ、もの悲しき影」

指揮: トン・コープマン Ton Koopman
アムステルダム・バロック管弦楽団 Amsterdam Baroque Orchestra
ソプラノ独唱: ドロテー・ミールズ Dorothee Mields
Opgenomen in de Waalse Kerk in Amsterdam op 10 juni 2012

Kantate BWV 202(結婚カンタータ)
『しりぞけ、もの悲しき影』(Weichet nur, betrubte Schatten)」BWV202は、ヨハン・ゼバスティアン・バッハが作曲した世俗カンタータの一つ。通称は「結婚カンタータ(Hochzeitskantate)」。成立年代は不明で、親しい知人の結婚式を祝うための作品であったと考えられている。全9曲からなり、ギリシャ神話を題材にした上品な作品で、ソプラノ用の独唱曲であることから、数多くのソプラノ歌手が挑戦してきた作品である。

山野に春が到来し、ギリシャ神話の神々が恋人達を結婚に誘う台本となっている。登場人物の相克や調和といった劇的なストーリー展開はなく、同じ舞台で起きた出来事を時系列で追いながら、前半は神々の力による愛の成就、後半は結婚後の将来に対する教訓を展開している。
器楽はオーボエ1本と弦楽器、通奏低音という必要最低限のもの。したがって予算や演奏者に糸目をつけない名士相手の作品とは考えられない。ごく親しい知人の旅立ちに花を添える作品であろうと推察されている。成立年代が判明していないため、この作品を贈られた夫婦も判明していない。

第1曲 アリア『しりぞけ、もの悲しき影』(Weichet nur, betrubte Schatten)
 ソプラノ・オーボエ・弦楽器・通奏低音、ト長調、4/4拍子
ダカーポの緩急緩3部からなるアリア。両端部は弦楽器の上昇分散和音のオスティナートにオーボエとソプラノの不安定なメロディが乗せられる。春の到来とともに晴れる冬の霧を表現したものといわれる。一方でソプラノの旋律は、甘美ながら伴奏と不協和音で交錯する。これは春から追放される悲しみ…霜と北風を表現したもの。曲が進むにつれ、軋んだ不協和音がほぐれ、調和しながらオーボエの間奏に移る。中間部に入ると、春の女神フローラの到来を告げ、活発なアンダンテに切り替わる。最初の歌唱では伴奏が沈黙するが、反復を繰り返すうちに伴奏が華やいでくる。3回反復する『フローラは花々を運び来る』(Denn sie traget Blummen zu)の歌詞どおり、伴奏が咲き乱れ、ソプラノの旋律も最高音に到達する。

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