アマデウス弦楽四重奏団 Amadeus String Quartet

アマデウス弦楽四重奏団 (Amadeus String Quartet) は、1950年代から1970年代を代表する弦楽四重奏団である。

解説

アマデウス弦楽四重奏団のメンバーは
・第1ヴァイオリン - ノーバート・ブレイニン Norbert Brainin
・第2ヴァイオリン - ジークムント・ニッセル Siegmund Nissel
・ヴィオラ - ペーター・シドロフ Peter Schidlof
・チェロ - マーティン・ロヴェット Martin Lovett
であり、終始変わらなかった。39年間という長きにわたり同一メンバーで活動を行った団体であった。

ウィーンで演奏を学んでいたブレイニン、ニッセル、シドロフだったが、ナチのウィーン占領を逃れてイギリスに渡る。3人は、同じようにイギリスに亡命していたポーランド生まれで独墺流派の高名なヴァイオリニスト、マックス・ロスタルに師事し、そこでロスタルの弟子であったイギリス人のロヴェットに出会う。この4人で1948年に弦楽四重奏団としてデビューした。籍はイギリスに置きつつも、芸風はドイツ・オーストリア風とみなされていた。1987年のシドロフの死によって活動が停止した。2005年にブレイニンも死去した。

芸風としては、ドイツの伝統に根ざしつつ、交響曲的な響きを持つ温かく重厚な音色と、適度なルバートによって生み出される緊張感、第1ヴァイオリンのブレイニンのロマンティックな表現に特徴がある。そのため、ドイツのロマンティックな楽団に共通することだが、彼らの解釈と曲が合っているときにはきわめて緊張感と迫力のある演奏をするが、ややマイナーな曲などの場合は凡庸な演奏をしてしまうこともある、という性格も持っていた。

1950 - 60年代は世界をリードする団体だったが、1970年代以降、聴衆や評論家の嗜好が彼らから離れていったきらいもあった。1970年代以降、アルバン・ベルク弦楽四重奏団のように機械的で鋭いテクニックを聴かせる演奏、あるいはわざと細身の演奏をする事によって意図的に繊細さ、優雅さを作り出す「室内楽的に抑制された」演奏が好まれたからである。アマデウス四重奏団の演奏スタイルは、このどちらからも遠いものだった。彼らは活動の後期において、時代の嗜好との乖離に戸惑っているようであった。したがって、今では評論家の口から彼らの名前が聞かれることも減少した。

しかしながら彼らの演奏の激しい高揚感や、アダージョにおける深い表現は、ブッシュ弦楽四重奏団などのドイツの先達から受け継がれたものであった。また、彼らが発するフォルテの輝きは他のカルテットに類を見ないものでもあった。彼らはドイツの楽団の理想であった「ベートーヴェンの弦楽四重奏のフォルティッシモはマーラーやブルックナーの交響曲のそれに劣るものではない」という言葉を体現した、歴史的に最後の楽団であったといえる。

業績としては1950年代から60年代に録音されたモーツァルト、ベートーヴェン、ブラームス全集やシューベルト、ドヴォルザークの録音などがあり、スタンダードの一つとして高い評価を受けている。

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