撥弦楽器:テオルボ Theorbo

テオルボ(英: Theorbo、仏: Theorbe、伊: Tiorba)は、リュート族の撥弦楽器。

16世紀末に現れ、バロック末期まで通奏低音楽器およびソロ楽器として幅広く使用された。同様の楽器でキタローネ(伊: Chitarrone)と呼称されるものもある。

構造

この時代の楽器は現代の楽器のように標準化されていないので、テオルボと呼称される楽器でも大きさや形状が様々異なるオリジナル楽器が知られている。ここでは、テオルボと呼ばれる楽器の一般的な特徴を叙述する。
胴体(ボディ)はリュート同様、洋梨を半分に割ったような後ろ側が丸い形状を持っており、そこに長いネックが取り付けられている。ボディーは、通常のリュートよりも大きく、ネックの長さは1メートル前後のものが多い。通常のリュート同様、指板が取り付けられる部分に更に拡張ネックと呼ばれる竿状の長いネックを取り付けている。弦はルネサンスリュート等とは違い通常単弦(1コース1弦)である。指板のあるネック部分にとり付けられている弦をストップ弦 (stopped string)、竿状の長いネックに取り付けられた弦を拡張バス弦 (extended bass string) 等と呼ぶ。

歴史と名称

上記のような特徴を持った楽器の一部はしばしばキタローネ(伊 Chitarrone)と呼ばれることもあるが、このことはテオルボ・キタローネの出現の歴史と関係している。
キタローネと名前のつく楽器は1580年頃にフィレンツェのカメラータで用いられ始めたと思われている。
この、カメラータのキタローネがどのような楽器であったかは詳しくわかっていない。
いずれにせよ、残されているオリジナル楽器などから、1600年から1610年頃には前項で記述したような拡張バス付きの楽器が急速にイタリアで広まり、相当数の楽器が作られたことがわかる。
フランスやイギリスでテオルボが本格的に用いられるようになったのは17世紀後半からであるが、これはフランスにおいてはマザラン卿らによるイタリア音楽の積極的な輸入、イギリスにおいても、イタリア風モノディ・オペラの伝播の時期と一致している。フランスにおける独自のバロック様式の発展、また、イギリスにおけるイタリア風オペラの流行によってこれらの地域でもテオルボは通奏低音楽器として盛んに用いられた。フランスにおいてはリュートが衰退した後も、通奏低音楽器として長く生き残った。バロック期のドイツでもテオルボは用いられていた。このことはドイツの博物館にテオルボが残されていることや、ドイツで制作されたオリジナル楽器が存在することなどからもわかる。しばしばジャーマンテオルボと呼ばれる楽器の中には、バロック期のリュートにおけるバロックリュートと同じニ短調調弦のための楽器が多く存在し、これらはバロックリュートの一種と見なされる。
17世紀末にはテオルボの果たしていた役割は徐々にアーチリュートに置き換えられていったとする見方もある。これは、バロック中期以降、通奏低音パートがヘ音記号の五線の上にまで上るような比較的高い音を用いるような作曲法が主流になり、1コース及び2コースを1オクターブ下げているテオルボではこれらのバス音の上に和声を付けられないのがその一つの理由であると考えられている。それでも、テオルボはバロック最末期まで通奏低音楽器として用いられ続けたが、古典期になると姿を消した。

レパートリー

テオルボ(キタローネ)はその黎明期からまず第一に通奏低音楽器としての役割を与えられていた。
モノディー歌曲や、それを受け継いだヴェネツィア風のオペラ、また、フランスで独自に発展したバロック様式においてつねにテオルボは通奏低音楽器として用いられていたので、これらの曲目はテオルボの主要なレパートリーと見なすことができる。一部のテオルボの名手たちは、テオルボのためのソロレパートリーを残している。

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