ピアノ: ベーゼンドルファー Bösendorfer

ベーゼンドルファー(ドイツ語:L. Bösendorfer Klavierfabrik GmbH )は、オーストリアに所在するピアノ製造会社である。

スタインウェイベヒシュタインと並んでピアノ製造御三家に数えられている。

沿革

1828年、オーストリア・ウィーンにてイグナーツ・ベーゼンドルファーにより創業された。以来、各国の帝室や王室の御用達として選定されたり、産業博覧会で入賞したりするなど、名声を高めていく。第二次世界大戦後の一時期、経営難に陥って経営がアメリカの企業体に移ったこともあったが、2002年にオーストリアの銀行グループであるオーストリア労働経済郵便銀行(英語版)が経営権を取得して、名実ともにオーストリアに復帰した。しかし2007年再び経営難に陥り、2008年にヤマハの子会社となった。

ベーゼンドルファーのピアノはフランツ・リストの激しい演奏に耐え抜いたことで多くのピアニストや作曲家の支持を得、数々の歴史あるピアノブランドが衰退していく中、その人気を長らくスタインウェイと二分してきた。

ベーゼンドルファーのピアノを特に愛用したピアニストとしてはヴィルヘルム・バックハウスが有名。ジャズ界においては、オスカー・ピーターソンが「ベーゼン弾き」としてよく知られている。最近のピアニストではアンドラーシュ・シフ、パウル・バドゥラ=スコダ、イェルク・デームス、フリードリヒ・グルダ、ヴァレンティーナ・リシッツァもベーゼンドルファーのピアノを好んで用いている。また、スヴャトスラフ・リヒテルも何枚かの原版を残している。

かつてベーゼンドルファーのピアノは1980年までショパン国際ピアノコンクールの公式ピアノの一つであったが、のちにヤマハとカワイとファツィオリが採用されたことにより公式ピアノから除外された。ウィーン・ベートーヴェン国際ピアノコンクールでは、使用ピアノがベーゼンドルファーだけと決まっている。

製品

「インペリアル」とも呼ばれる最上位機種のフルコンサートグランドピアノ「モデル290」がベーゼンドルファーの代表機種で、標準の88鍵の下にさらに4?9組の弦が張られ、最低音を通常よりも長6度低いハ音とした完全8オクターブ、97鍵の鍵盤(エクステンドベース)を持つピアノとして有名である。これはフェルッチョ・ブゾーニがJ.S.バッハのオルガン曲を編曲したとき、低音部に標準のピアノでは出せない音があったため、ルードヴィッヒ・ベーゼンドルファーに相談したことが始まりと言われている。エクステンドベースが追加されたことによって弦の響板が広がり、共鳴する弦も増えて中低音の響きが豊かになった。しかしそのため、しばしば一部のピアニストからは「中低音の響きは豊かだが、高音とのバランスを考えて弾かなければならず、弾きこなすのが難しいピアノだ」と言われる。以前は、拡張域の鍵の部分に蓋を付けることで、一般の曲の演奏時に誤打を防いでいたが、現行品では白鍵も黒くすることで区別している。

音色は至福の音色と呼ばれる。ベーゼンドルファーのピアノは1年以上の月日をかけて全工程を手作業で作られている。代表的なモデルでは井形に組まれた強固な支柱の上にスプルース材のブロックを積み上げてインナーリムを製作し、それに比較的薄いスプルースからなるアウターリムを張り合わせることで、ピアノ全体がスプルース材を介して豊かな中低音を響かせる設計となっている。現在までにベーゼンドルファーが生産したピアノは50,000台ほどで、およそヤマハの100分の1、スタインウェイの10分の1である。

その他

日本国内では、過去に総代理店として日本ベーゼンドルファーが本社(静岡県磐田市)のほか東京都中野区、大阪市淀川区の三カ所にショールームを所有していた。本社ショールーム内に設けられているアンティークピアノのコレクションはベーゼンドルファーのみならずベートーヴェンの時代のジョン・ブロードウッドやショパンの時代のプレイエル、エラールなどの有名ブランドの他に、ピアニストのアルフレッド・コルトーが所有していたダブルグランドピアノやジラフピアノといった極めて珍しい形のピアノもコレクションされていた。

しかしウィーン本体側がヤマハに買収されたことにより2007年11月27日付で日本ベーゼンドルファー(株式会社浜松ピアノセンター)は倒産し、各地のコンサートホールの運営ならびに調律、修理などの事業は株式会社ビーテックジャパンに引き継がれ、ベーゼンドルファーの技術メインテナンス会社として製品を維持している。

ヤマハが株式会社ベーゼンドルファー・ジャパンを発足し、東京都中野区に本社ショールーム、静岡県浜松市にテクニカルサポートセンターを構え、東京、大阪に特約店を設置するなどした。その後、2009年9月1日付けのベーゼンドルファー・ジャパン・グループ内のプレスリリースには、株式会社ベーゼンドルファージャパンはヤマハ株式会社へ事業譲渡されると発表されている。なお、2009年11月30日付のプレスリリースでは、テクニカルサポートセンターは、静岡県掛川市に移転されたことが発表された。

2000年代初頭にオーディオ機器(スピーカー)の開発・製造をしており、日本国内ではオーディオ関連商社である株式会社ノアの手で輸入されていたが、ヤマハ傘下になり撤退した。現在、ベーゼンドルファースピーカーの設計者が、創業者イグナーツがかつて在籍しており、ヤマハとベーゼンドルファーの買収競争もしたオーストリアのピアノブランド、ブロードマンに移り、Brodmann Acousticsとして販売されている。

Wikipedia

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